きょうの日本民話
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2009年 元旦の新作昔話
助けたツルの恩返し
岡山県の民話
むかしむかし、岡山の瀬戸内海にうかぶ大きな島に、親子の三羽のツルがわたってきました。
三羽が仲よくエサをついばんでいると、そこへタカが飛んできて子ヅルに襲い掛かり、脚の爪にひっかけて逃げ去ろうとしました。
ところがタカはバランスを崩して、子ヅルを海へ落としてしまったのです。
親ヅルたちは必死に海に落ちたわが子をすくおうとしましたが、手だてがありません。
うろうろしていると、さいわいなことに島の漁師がこれを見ていて、舟を出して子ヅルを助けました。
そして空へもどしてやろうとしましたが、子ヅルは羽をバタバタさせるばかりです。
「おかしいのう。怪我でもしたのか?」
漁師は子ヅルをつれて帰ると、庄屋さんのところへ連れていきました。
庄屋さんは子ヅルを調べて、やがて脚を痛めていることがわかりました。
庄屋さんは子ヅルをあずかると薬を調合して、添え木などをあてて介抱してやりました。
そのおかげで一月ばかりすると、子ヅルの脚は治りました。
ある日の夕方、子ヅルは思いきり羽をひろげて羽ばたきはじめ、親鳥たちがねぐらにしている島へ飛び去っていきました。
さて、それから三年ほどたった年の正月の事です。
朝早くから、二羽のツルが庄屋さんの家の上空を舞いつづけていました。
日中は山の方へ帰っていきましたが、夕方になるとまたやってきて、二度三度、家の上空を舞って去っていきました。
そこへ、庄屋さんの家で働いている若い男が走りこんできたのです。
若い男は、にぎっていた十センチばかりの黄色い棒きれのようなものを二本、庄屋さんに見せました。
「なんじゃな、そんなにあわてて。うん? ・・・これは!」
庄屋さんの顔色が、さっとかわりました。
棒きれかと思ったものは、万病にきくという、高価な朝鮮人参だったのです。
「こんなもの、どこでひろったんじゃ。朝鮮人参など、島にあるわけがない」
「はい、家の前に落ちていました。そういえば、朝早くから二羽のツルが家の上を何度も舞っていましたから、もしかすると」
日本にはない朝鮮人参が、そのへんにあるはずはありません。
若い男がいう通り、朝鮮から海をこえてわたってきたツルが、口にくわえてきたのでしょうか。
庄屋さんは二本の朝鮮人参を見つめながら、ツルの恩返しに感謝しました。
おしまい
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