きょうの日本民話
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2009年 1月3日の新作昔話



白ギツネの恩返し
奈良県の民話

　むかしむかし、ある国に、五衛門(ごえもん)さんというお金持ちがいました。
　ある朝、五衛門さんが、うじ神さまへ行こうと野道を歩いていると、一匹の白ギツネが狩人に追われて逃げてきました。
　五衛門さんは、急いで白ギツネをはかまの中へ隠してやりました。
　それを見た狩人は、五衛門さんのそばへくるなり、
「さあ、白ギツネを返してもらおうか。嫌ならお前さんを撃つぞ！」
と、言って、五衛門さんに鉄砲を向けました。
「では、わしがこのキツネを買うから、それで許してくれ」
　五衛門さんは財布ごと狩人にわたして、白ギツネをゆずってもらいました。
「もう大丈夫だよ。でも、もう二度とこんなところへくるんじゃないよ」
　さて、それから何日かすぎて、白ギツネが山のほらあなで寝ていると、表の方でなにやら大勢の話し声がします。
(いったい、何の騒ぎだろう？)
　白ギツネがそっとのぞいてみたら、山賊たちが集まって相談をしています。
「いいか、明日の晩、五衛門の家を襲うことにするぞ」
　さあ大変です。
　早く知らせてやらないと、五衛門さんは山賊に殺されてしまうかも知れません。
　山賊たちがいなくなるのを待って、白ギツネは五衛門さんの屋敷へ飛んでいきました。
　そして五衛門さんを見つけると、頭を下げて言いました。
「わたしはこの前、あなたに助けていただいた白ギツネです。実は明日の晩、この屋敷を襲うと山賊たちが相談しているのです」
　それを聞いた五衛門さんは、とても喜びました。
「ありがとうよ。よく知らせてくれたね」
　でも、どうやって山賊を退治したらよいのかわかりません。
　屋敷にいる男の人たちを全部集めても、おそろしい山賊たちには勝てません。
　すると白ギツネが、
「大丈夫、わたしにまかせてください」
と、言うなり、外へとびだしていきました。
　白ギツネは、この近くの村に住んでいる強い侍のところへとんでいき、美しい娘さんに化けて言いました。
「明日の晩、わたしの家に山賊がやってきます。どうか助けてください！」
　侍は美しい娘さんがすっかり気に入り、一緒に五衛門さんの屋敷にやってきました。
　さて次の晩、侍は屋敷の人たちをみんな近所の家に避難させると、丈夫な鍵のついた倉の中に大きな火ばちを運びこみ、炭火をがんがんおこしました。
　それから部屋にもどって、一人で酒を飲んでいました。
　するとそこへ、手に手に刀を持った山賊たちがやってきて、
「やい、金を出せ！」
と、言いました。
　侍はおとなしく、山賊たちを倉へ案内しました。
「ここに金があります。どうぞ、好きなだけ持って行ってください」
　それを聞いた山賊たちは、大喜びで倉の中へ入っていきました。
　すると侍はそのすきを見て、とうがらしの粉が入った袋を火ばちの中へ投げこみ、外から鍵をかけてしまいました。
　さあ、それから中は大変なことになりました。
　とうがらしの粉が火ばちの火で燃え上がると、その煙が山賊たちを襲ったのです。
　山賊たちは一人のこらず苦しんで、その場に倒れました。
「さて、そろそろいいだろう」
　侍は五衛門さんたちをよんできて、倒れている山賊を一人残らずなわでしばりあげました。
　それを見た娘さんは白ギツネの姿にもどると、うれしそうに山へかけていきました。
　五衛門さんは消えていく白ギツネに向かって、手を合わせて言いました。
「ありがとう。白ギツネさん」

おしまい

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