きょうの日本民話
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2009年 1月5日の新作昔話
松屋のびんつけ
福井県の民話
むかしむかし、田島川(たじまがわ)のふちにすんでいた大蛇が、そのころ評判の松屋の小町娘にほれて、何とか嫁にしたいと思いつめていました。
そこである晩、大蛇は若者に変身すると松屋を訪ねていき、
「娘さんをわたしの嫁にいただきたい。もし嫁にくださるなら、一朝(いっちょう)で千金(せんきん)を得る秘伝をお教えしましょう」
と、願い出ました。
松屋の主人は、
「今日、初めて会った者に、突然そんなことを言われても困る」
と、若者の申し出を断りましたが、若者が毎晩やってきては熱心にたのみましたので、主人も娘を嫁にやる決心をしました。
ところが婚礼をすませた後、主人夫婦が二人を見送っていますと、若者は田島川のたもとで立ち止まり、
「わたしは、この川にすむ大蛇です」
と、言うが早いか、たちまち蛇の姿を現して、娘をつれて水底に姿を消してしまいました。
大事な娘を大蛇の嫁にやってしまった主人夫婦は、毎日のように泣き暮らしていましたが、若者が言い残していった一朝で千金を得る方法を思い出すと、一心に仕事に打ちこみ始めました。
その方法とは、びんつけの製法のことで、当時は男も女も髪を結っていたため、びんつけ油はどこの家でも必需品だったのです。
松屋のびんつけは特にべたつかず、匂いも良かったので、たちまちのうちに主人夫婦は大金持ちになりました。
そんなある時、川筋一体が突然の大火事にみまわれ、松屋も火につつまれましたが、二匹の大蛇が現れて松屋を火事からすくってくれたのです。
ですが二度目の大火事の時に、その二匹の大蛇は松屋もろとも焼け死んでしまい、松屋のびんつけも品質が落ちて売れなくなってしまったそうです。
おしまい
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