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2009年 1月11日の新作昔話
橋立小女郎(はしだてこじょろう)
京都府の民話
むかしむかし、天の橋立(あまのはしだて)に『橋立小女郎(はしだてこじょろう)』とよばれる白ギツネがいました。
この白ギツネはいつもきれいな女の人に化けて人間をだますので、こんな名前で呼ばれたのです。
さて、ある日の事、江尻村(えじりむら)の太平(たいへい)と源十(げんじゅう)という漁師が魚を舟に積んで、宮津(みやず)の港へと向っていました。
そして舟が橋立の干貫松(せんかんまつ)あたりに来たとき、突然、可愛らしい女の声が聞えました。
「私は旅の娘でございます。どうか宮津まで、乗せて行って下さいな」
二人の漁師が、そんな声を無視して舟をこいでいると、また声がします。
「どうかお願いです。乗せて下さい。私はとても疲れていて、もう歩けません」
あまりにもかなしい声に源十は仕方なく舟を止めて、女を乗せてやろうとしましたが、その女の姿が見えません。
「ははーん、さては橋立小女郎のしわざか」
そう思って、また舟を出しました。
さて、宮津に着いた二人が舟底を見ると、運んできたはずの立派な大鯛がありません。
「しまった! さては橋立小女郎に一ぱいくわされたか!」
腹を立てながら舟底の隅をふとのぞくと、なんと一匹の白ギツネがいたではありませんか。
「この野郎、叩き殺してやる!」
源十がカンカンに怒って白ギツネを捕らえようとすると、白ギツネは可愛い小女郎に姿を変えて、
「漁師さん、もう二度と悪いことはいたしませんから、許してください」
と、いうのです。
キツネとわかっていても、人間の姿をした者を叩き殺すわけにはいきません。
そこで源十たちは、とりあえず小女郎が大鯛を返すまで捕まえておこうと、縄で小女郎をしばって舟底に入れておいたのです。
すると小女郎は、哀しそうな声でいうのです。
「どうか、この縄をほどいてください。縄が体にくいこんで、痛くてたまりません」
なんとも哀れな声を出す小女郎を源十たちは可愛そうに思い、縄をほどいて、今度は魚籠(ぎょろう)に入れてふたをして、港へ舟を進めたのです。
ところが不思議な事に、舟が思うように進みません。
「さては、これも橋立小女郎のせいか? よし、今に見ておれ!」
怒った源十と太平は橋立の途中に舟を止めて、落ち葉に火をつけると、魚籠の中から小女郎の白い二本の手をひっぱり出して火の中に放りこんだのです。
まっ白い小女郎の手足は、黒こげになりました。
「さあ、このまっ黒にこげた橋立小女郎を持って帰って、村の者に見せてやろう」
二人は黒こげの小女郎を、かごにつめて村に帰りました。
そして村人の前でかごのふたを開いて、
「みんなよく見ろ、これが橋立小女郎の丸焼きになった姿じゃ」
と、いったのです。
ところがかごの中から出てきたのは、黒こげになった二本の大根だったということです。
おしまい
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