きょうの日本民話
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2009年 1月19日の新作昔話

聞こえなかったおよばれ

凍ってしまった声
長野県の民話

 むかしむかし、とても寒い国がありました。
 毎日毎日、雪が降り続くので、家は屋根まですっぽり雪の中にうずまってしまいます。
 だから雪の中にトンネルを作って、家と家の間に、ふしをとった長い竹筒をさしこんで電話のように使います。
 ある寒い寒い年のこと、一軒の家でおだんごを作りました。
 とてもおいしかったので、となりの家の人にもごちそうしてやろうと思い、そこで竹筒に口をあてて、
「もしもし、おだんごを作りましたので、食べにきてください」
と、言いました。
 ところが、いくらよびかけても返事がありません。
「なんだ。せっかくごちそうしてやろうと思ったのに」
 おだんごを作った家の人はすっかり腹をたてて、全部自分のところで食べてしまいました。
 やがて長い冬もすぎて、雪のとける季節になりました。
 ある日、竹筒の中から、
「もしもし、おだんごを作りましたので、食べにきてください」
と、言う声が聞こえてきました。
 それを聞いたとなりの家の人は喜んで、さっそくおよばれに行きました。
 ところが、
「今ごろ、何を言っているのです」
と、言われてしまいました。
「いや、さっきたしかに『おだんごを作りましたので、食べにきてください』と言いましたよ」
「はい、たしかに言いました。でもそれは、去年の事です。その時は返事もしないで、今ごろ来ても」
「とんでもない。わたしたちが聞いたのは、今さっきだ」
 とうとう、となりどうしでけんかになってしまいました。
 するとそこへ、近所のお年寄りがやってきました。
「まあまあ、どっちも落ち着いて。ところで何を言い合っているんだ?」
 そこで二人が、お年寄りにわけを話すと、
「あははは。なんだ、そんなことか。それはな、今年の冬は特別に寒かったので、声が竹筒の中でこおりついてしまったのじゃよ」
と、言いました。
「それなら、どうして今ごろ聞こえてくるのです?」
「決まってるじゃないか。あったかくなったので、こおりついた声もとけてきたのじゃよ」
「なるほど」
 けんかをしていた二人は、やっとなっとくしました。
「いや、そうとは知らないで、腹をたててすみませんでした」
「いえいえ、こちらこそすみませんでした」
 そこでもう一度おだんごを作って、あらためてとなりの家の人にごちそうしたのです。

おしまい

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