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2009年 1月21日の新作昔話

天人女房(てんにんにょうぼう)

天人女房(てんにんにょうぼう)
山口県の民話

 むかしむかし、あるところに、一人の若い木こりが住んでいました。
 ある日の事、木こりは仕事に出かける途中で、一匹のチョウがクモの巣にかかって苦しんでいるのを見つけました。
「おや? これは可哀想に」
 木こりはクモの巣を払って、チョウを逃がしてやりました。
 それから少し行くと、一匹のキツネが罠(わな)にかかっていたので、
「おや? これは可哀想に」
と、木こりは罠からキツネをはすして助けてやりました。
 またしばらく行くと、今度は一羽のキジが藤かずらにからまってもがいていましたので、
「おや? これは可哀想に」
と、木こりはナタで藤かずらを切り払い、キジを助け逃がしてやりました。
 さて、その日の昼近くです。
 木こりが泉へ水をくみに行くと、三人の天女が水を浴びていました。
 天女の美しさに心奪われた木こりは、泉のほとりに天女が脱ぎすてている羽衣(はごろも)の一枚を盗みとって、木の間に隠れました。
 やがて三人の天女は水から出てきましたが、そのうちの一人だけは天に舞いあがるための羽衣が見つかりません。
 二人の天女はしかたなく、一人を残して天に帰って行きました。
 残された天女は、しくしく泣き出しました。
 これを見た木こりは木の間から出て行って、天女をなぐさめて家へ連れて帰りました。
 そして羽衣は、天井裏へしまいこみました。
 そして何年かが過ぎて、二人は夫婦になったのですが、ある日木こりが山から戻ってみると、天女の姿が見あたりません。
 天井裏の羽衣も消えています。
 ふと見ると、部屋のまん中に手紙と、豆が二粒ころがっていました。
 手紙には、こう書いてありました。
《天の父が、あたしを連れ戻しに来ました。あたしに会いたいのなら、この豆を庭にまいてください》
 木こりがその豆を庭にまいてみると、豆のつるがぐんぐんのびて、ひと月もすると天まで届いたのです。
「待っていろ、今行くからな」
 木こりは天女に会いたくて、高い高い豆のつるをどんどん登って行きました。
 何とか無事に天に着いたのですが、しかし天は広くて、木こりは道に迷ってしまいました。
 すると一羽のキジが飛んで来て、木こりを天女の家に案内してくれたのです。
 しかし、天女に会う前に父親が出て来て
「娘に会いたいのなら、この一升の金の胡麻(ごま)を明日までに全部拾ってこい」
と、言って、天から地上へ金の胡麻をばらまいたのです。
 天から落とした胡麻を全て拾うなんて、出来るはずがありません。
 とりあえず金の胡麻探しに出かけた木こりが、どうしたらよいかわからずに困っていると、あの時のキツネがやって来て、森中の動物たちに命令して、天からばらまいた金の胡麻を一つ残らず集めてくれたのです。
 木こりが持ってきた金の胡麻の数を数えた天女の父親は、仕方なく三人の娘の天女を連れてくると、
「おまえが地上で暮していた娘を選べ、間違えたら、お前を天から突き落としてやる」
と、いうのです。
 ところが三人の顔が全く同じなので、どの娘が木こりの探している娘かわかりません。
 するとチョウがひらひらと飛んで来て、まん中の娘の肩にとまりました。
「わかりました。わたしの妻は、まん中の娘です」
 見事に自分の妻を言い当てた木こりは、その天女と幸福に暮らしたということです。

おしまい

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