きょうの日本民話
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2009年 1月28日の新作昔話

浦島子(うらしまこ)

浦島子(うらしまこ)
京都府の民話

 これは、京都に伝わる浦島伝説です。
 むかしむかし、丹後の国(たんごのくに)の筒川(つつかわ)に、島子(しまこ)という美しい若者がいました。
 ある日の事、島子が沖に出て釣りをしていると、きれいな亀が釣れました。
 島子はその亀を舟に入れたまま、その夜は舟で眠ることにしたのです。
 ところが夜中のこと、どこから現われたのか、美しい娘が島子を揺り起こして言います。
「島子さん。どうか私の住んでいる蓬来山(ほうらいさん)まで、お越し下さい。どうか目を閉じて、舟をこいで下さいませ」
 島子は驚きながらも、娘に言われた通り目を閉じて舟をこぎ出しました。
 そしてしばらくすると、
「島子さん。もう目を開けていいですよ」
と、娘が言うので、島子が目を開けてみるとどうでしょう。
 そこは美しい宮殿だったのです。
 宮殿の中からは音楽が流れて、たくさんの侍女たちが島子を出むかえてくれました。
「亀姫さま、お帰りなさいませ」
 どうやらその美しい娘は、この宮殿のお姫さまのようです。
 島子は宮殿で毎日おいしいごちそうを食べて、侍女たちの舞いや音楽に時のたつのを忘れるほど楽しい日々を送りました。
 そしてとうとう、三年の月日が流れました。
 島子は、ふと故郷の筒川が恋しくなり、亀姫さまに言いました。
「姫さま、わしは故郷へ帰りとうなりました。お願いです。どうか故郷に帰して下さい」
 すると亀姫さまは、名残り惜しそうに一つの箱を島子に渡して言いました。
「それは残念なことです。それではお別れの印に、この箱をあなたにさしあげましょう。これは『時の箱』です。これを持っていれば、けっして老いることはないでしょう。でも、どんなことがあっても決して箱のふたを開けないで下さいね」
 島子は再び亀姫さまと一緒に舟に乗り、目を閉じて舟をこいだのです。
 そして目を開けたところは、もう島子の故郷の水江(みずえ)でした。
 島子は舟から降りて、自分の家を探しました。
 しかし不思議なことに島子の家はなく、村の人たちも知らない人ばかりです。
「あの。ここは水江の浦(うら)でしょうか?」
と、村人に訪ねると、
「その通りじゃ」
と、答えます。
「それなら、浦島子の家はどこでしょうか?」
「浦島子? ・・・ああ、そう言えば三百年ほどむかしに、浦島子という若者が釣りに出たまま帰らなんだ話しを聞いたことはあるが」
と、村人は不思議そうに島子に答えました。
 この話しを聞いた島子は、やっと気がつきました。
「三年のつもりが、もう三百年もたっておったのか・・・」
 そして島子は急に悲しくなり、なつかしい亀姫がくれた箱を、ついに開けてしまったのです。
 するとその途端、『時の箱』に入れられた時がけむりになって吹き出して、それをあびた島子は白髪頭の老人になってしまいました。

おしまい

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