きょうの日本民話
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2009年 2月7日の新作昔話

金魚に取りつかれた若者

金魚に取りつかれた若者
福井県の民話

 むかしむかし、敦賀(つるが)の浜の浦底(うらそこ)の里には、水のきれいな大きな池があって、赤白斑(あかしろまだら)のそれは美しい金魚がすんでいました。
 この世の物とも思われないほどの美しさに、金魚を見た者はだれもが心をうばわれて、自分の物にしたいと思いました。
 しかし、村の長老たちから、
「あの池の金魚があんなに美しいのは、池の主のお使いだからだ。それを取るような事があれば、きっとたたりがあるぞ」
と、言われていたので、村人はみんなこわがって近よらなかったそうです。
 ところが漁師の猪之助(いのすけ)という若者が、偶然この池のそばを通りかかり、何気なく池の中をのぞきました。
 するとすぐに、あまりもに美しい金魚に心をうばわれてしまったのです。
 まもなく池の中から、金魚たちの踊りにあわせて、もの哀しい歌声が聞こえてきました。
♪出たいな、出たいな、この池を
♪早く出たいな、いきたいな
♪海をわたって、竜宮へ
♪月夜の晩に、いきたいな
 この歌を耳にした猪之助は、金魚たちがひどく哀れに思えて、毎日のように池をのぞきにいくようになりました。
 それを知った村人や長老は、
「これ、猪之助、目を覚ませ。二度とあの池にいってはならん。命をとられてしまうぞ」
と、言ってひきとめましたが、池の金魚にとりつかれた猪之助の耳にはもはやとどきません。
 そして十五夜の美しい満月の夜、池に出かけた猪之助は、ぞうりだけを残して姿を消してしまいました。
 不思議な事に、池の金魚も同じ夜にいなくなったそうです。

おしまい

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