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2009年 2月17日の新作昔話

ぼっけもんの大蛇退治

ぼっけもんの大蛇退治
鹿児島県の民話

 むかしむかし、谷山に六衛門(ろくえもん)と四郎右衛門(しろうえもん)という、怖い物知らずの力持ちがいました。
 鹿児島では力持ちを『ぼっけもん』といいます。
 谷山では、二人を知らない者はいませんでした。
 六衛門はウデドッ、四郎右衛門はシトドシと、あだ名されていました。
 ある日の事、ウデドッとシトドシは伊集院まで、サツマイモを買いに出かけました。
 ところが伊集院ではサツマイモが不作で、誰も売ってはくれません。
 それに、夜になっても泊めてくれる家がありませんでした。
「どうしたものか」
 二人が、ほとほと困っていると、ある男の人が、
「山の中に、誰も住んでおらん家があるぞ。ただその家には大蛇が二匹住んでいて、村人は近寄らんが」
と、教えてくれたのです。
「そいつはおもしろい。たいくつしのぎじゃ、大蛇退治でもするか」
と、二人はその家へ泊まることにしたのです。
 そして夜中の事、ズリ、ズリズリ、ズリズリズリと、どこからか音が近づいて来ます。
 起き上がると、四つのまっ赤な目が暗闇の中に光っていました。
 二人は顔を見合わせて、
「さっそく来たな。一匹目はおいじゃ」
と、ウデドッがいうと、
「よし、二匹目はおいが引き受けた」
と、シトドシが答えました。
 大蛇は大きな口を開けて、襲いかかってきましたが、
「ドリャーー!」
 ウデドッは、襲いかかってきた大蛇の上あごと下あごを両手でえいっとばかりにつかんで、地面にたたきつけました。
 シトドシは、自分に飛びかかってきた二匹目を、
「エイッ、ヤーッ」
と、たたきのばしてしまいました。
 次の朝、ウデドッとシトドシが二匹の大蛇をひきずって村にやって来ると、村の人たちは大喜びで、
「ほんに、助かりました」
と、礼をいって、袋にサツマイモをたくさん詰め込んで二人の前に積みあげたのです。
 ウデドッとシトドシは、
「また大蛇が出てきたら、いつでも力になるぞ」
と、サツマイモをたっぷりと持って、谷山へ帰っていきました。

おしまい

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