きょうの日本民話
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2009年 3月12日の新作昔話

子ザルのまつ

子ザルのまつ
長野県の民話

 むかしむかし、松代町(まつしろちょう)に、徳嵩源五郎(とくたかげんごろう)という、腕のいい彫り物師が住んでいました。
 あるとき源五郎は、山でサルの親子を見つけました。
 猟師の鉄砲の弾を受けて逃げてきたのか、母ザルはすでに息絶えて、そのふところには生まれたばかりの子ザルが、おっぱいを探して手足を動かしています。
「なんと、可哀想な」
 哀れに思った源五郎は、さっそく子ザルを抱くと家に連れて帰りました。
 その日から源五郎夫婦は、子ザルを『まつ』と呼び、まるで我が子同様に可愛がったのです。
 まつも大きくなるにつれて二人になついて、そのうち源五郎が教え込む踊りや芸当を、それは上手にやってみせるようになりました。
 誰か人が来ると得意の芸をしてみせたり、ごはんの給仕をしたりするので、この『まつ』の話は評判になって、やがては松代(まつしろ)の殿さまの耳にまで届きました。
 殿さまはさっそく、源五郎とまつを呼びよせました。
 まつは源五郎の合いの手にあわせて、
「ほれ、でんぐり返りだ。ほれ、逆立ちだ」
と、次々と芸をして見せるので、殿さまは大喜びです。
 そしてとうとう、
「金はいくらでも出そう。だから、このサルをゆずってくれ」
と、言い出したのです。
 これには源五郎も、困ってしまいました。
 たとえ殿さまの命令でも、まつは我が子同様です。
 何と返事をしたものかと迷っていると、源五郎のそばに座っていたまつが突然、殿さまのそばへ走りよって、ていねいに両手をつくと、
『そればかりは、ごかんべんを』
と、言うように、何度もおじぎをしたのです。
 これを見た殿さまは、とても心を打たれて、
「よいよい、今の申し出は取り消しじゃ。そのかわり、時々城へ遊びに来るのじゃぞ」
と、やさしく言ったそうです。
 こうしてめでたく、源五郎夫婦とまつは殿さまからほうびをもらい、その後も幸せに暮らしました。
 今でもこのまつの墓は、松代町大信寺にある徳嵩家の墓地に残っているそうです。

おしまい

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