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2009年 3月17日の新作昔話

のさんの賭け

のさんの賭け
鹿児島県の民話

 むかしむかし、ある村に、金持ちの親方がいました。
 この親方は、意地が悪いので有名です。
 ある日の事、親方は家の前に大きな看板を出しました。
《三日の間、『のさん→難儀』と言わなければ、一日につき一両ずつ出す。ただし、言えば鼻を切る》
 一両につられて、一人の男が親方を訪ねました。
 親方に言われた通り、昼飯も食べずに山で竹掘りをして、やっと掘った竹をかついで帰ると親方が、
「もう一かつぎ掘ってこい。昼と夕食は、その後で一緒に食わせてやる」
 これを聞いた男が、たまらず、
「のさん」
と、言ってしまったので、男は親方に鼻を切られてしまいました。
 しばらくすると、また一人の男が親方を訪ねてきました。
 その男、一日目はなんとか無事に過ごしたのですが、二日目は夕飯も食べさせてもらえなかったので、思わず、
「のさん」
と、言ってしまい、鼻を切られたのです。
 またしばらくして、今度は利口そうな男が親方を訪ねてきました。
「看板を見てやってきた。『のさん』と言わねば一両をくれるとあるが、そうではなく、わしは親方と勝負がしたい」
「ほう、勝負とは?」
「わしが『のさん』と言えば、鼻ではなく首を切られてもよい。だが、親方が『のさん』と言えば、親方の鼻を切らせてもらう」
 それを聞いた親方は、笑いながら、
「いいだろう。わしは金持ちだ、なに不自由なく暮らしておる。わしが『のさん』と言うはずがない」
と、言いました。
 さて、親方はさっそく男に仕事を言いつけましたが、男は自分で弁当を持っていったので、腹を空かさずに仕事を続けました。
 二日目に、親方が言いました。
「瓦ふきが来るから、その瓦ふきのする通りにしろ」
 やがて瓦ふきが来て、古い小屋の屋根瓦をはがすのを見て、男は母屋(おもや)の屋根瓦をはがしはじめました。
 そこに親方がやって来て、屋根がメチャクチャになっているのを見ると、
「こっちのは、はがさんでもええんじゃ。ああ、のさんのことだ」
と、言ってしまったのです。
 これを聞いた男は、いきなり親方の頭を押さえつけると、
「約束通り、親方の鼻を切らせてもらうぞ」
と、言いました。
 親方は、まっ青になりながら、
「ああ、わしが悪かった。財産の半分をくれてやるから、許してくれ」
と、泣いて謝りました。
 親方から財産の半分をもらった男は、先に鼻を切られた二人にも財産を分けてやったということです。

おしまい

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