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2009年 3月23日の新作昔話

お嫁さんになれなかったウグイス

お嫁さんになれなかったウグイス
静岡県の民話

 むかしむかし、とても美しい娘さんが、毎日のように村へやってきました。
 どこから何をしにくるのか、だれもわかりません。
 でも、今まで見たこともないくらい、美しい娘さんです。
「なんてきれいな娘だ。あの娘の婿になりたいな」
 村の男たちは、みんなうっとりして娘さんを見つめました。
 そして一人の男が、
「おら、何としても、娘の婿になってやるぞ!」
と、ある日、娘さんのあとをつけていったのです。
 そうとは知らない娘さんは、村を出るとどんどん山の方へ行きます。
(はて、どこまで行くのやら?)
 男が不思議に思いながらもついていくと、山の中に立派な屋敷があり、娘さんはその中へ入っていきました。
 男も急いで、屋敷に飛び込みました。
(おや、だれもいないのかな?)
 男がキョロキョロしていると、さっきの娘さんが出てきていいました。
「何か、ご用ですか?」
「頼む! 何でもいう事を聞くから、おらをあんたの婿にしてくれ!」
 すると娘さんは、にっこり笑って言いました。
「わたしは、この屋敷に一人で住んでいます。もし、婿になりたかったら、三年の間、わたしのいるところを見ないで働いてください」
「わかった、約束する」
 男は喜んで、さっそくこの屋敷で働くことにしました。
 でも娘さんは、奥の部屋にこもったきり二度と姿を見せません。
 まきをわったり、水をくんだりと、男は毎日一生懸命働きましたが、さみしくてたまりません。
 それでもがまんして、がんばりました。
 そしていよいよ、あと六十日ほどで三年になるという時、男はどうしても娘さんを見たくなりました。
(たったひと目、ひと目だけなら大丈夫だろう)
 男は、こっそり娘さんのいる奥の部屋に行きました。
 部屋の前に立つと、中から静かにお経を読む娘さんの声が聞こえてきます。
(お経か? どうしてお経なんか読むのかな? まあいい)
 男はどきどきしながら、ふすまを少し開けて、そっと中をのぞいてみました。
 すると、娘さんは大きな三方の上にすわって、一心にお経を読んでいました。
 三方というのは、おもちやおそなえものをのせる台です。
 部屋の中だというのに、娘さんのとなりには梅の木が立っていて、美しい花が咲いていました。
 男はびっくりしてふすまを閉めようとすると、それに気づいた娘さんが、急に泣き出しました。
 男はあわてて、娘さんのそばへ行きました。
「かんべんしてくれ。ただ、あなたをひと目見たくて」
 すると娘さんは、涙をこぼしながら言いました。
「わたしはウグイスです。あと六十日で一緒になれるというのに、どうして約束を守ってくれなかったのです。このお経を読んでしまわないうちに、人に姿を見られては、もう人間になることは出来ません」
 そのとたん娘さんが飛び上がり、男は気を失ってしまいました。
 しばらくして男が目を開けると、娘さんの姿も屋敷もなく、山の中に一人でぽつんと座っていました。
 男のそばには古い梅の木があり、花の咲いた枝の上で一羽のウグイスが鳴いていました。

おしまい

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