きょうの日本民話
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2009年 3月30日の新作昔話
山弥長者(さんやちょうじゃ)
大分県の民話
むかしむかし、大分の萩原(はぎわら)に、山弥之助氏定(さんやのすけうじさだ)という商人がいました。
ある春の日の事、仲間と二人で商売に出た三弥は、帰り道に日向(ひゅうが)と豊後(ぶんご)のさかい近くにある十六山(とうろくやま)のふもとで一休みをしていました。
商いの疲れからか、連れの男は気持ちよさそうにいびきをかいています。
すると男の鼻に一匹のハチが飛んできて止まると、なんと鼻の穴にもぐり込み、やがて出てくると、どこへともなく飛んでいってしまいました。
それを見ていた三弥は、しばらくして目覚めた男にこんな話しを聞きました。
「なあ、おれはとてもいい夢を見たぞ。なんとハチが飛んできて、『十六山へ行け。黄金が埋まってるぞ』と、ハチはそれだけ言って飛んでいっちまったんだ」
それを聞いた三弥は、その翌日からさっそく、あちらこちらと手当たり次第に掘りました。
こうして何年か過ぎたある日、山弥はついに黄金を掘り当てたのです。
そしてそれをもとに商売をはじめて、やがては西国一といわれるほどの長者になったのです。
それから山弥は万屋町(よろずやちょう)に立派な屋敷を建てて、ぜいたくな暮らしを始めました。
珍しい品物をたくさん取り寄せて、天井はギヤマン(→ガラス)を張り、その上に金魚を飼って下からながめるのです。
やがては府内(ふない)の殿さまも山弥の屋敷を訪れて、のんびりとすごすようになったのです。
ところがある日の事、ギヤマン張りの天井の部屋で、殿さまと山弥の息子が寝ころんで金魚をながめていました。
天井の水槽には新しい金魚を取り寄せたばかりで、つい調子にのった息子は、
「殿、あの黒いのが出目金で、その隣りのが、りゅう金でございます」
と、寝ころんだまま足で金魚をさして、殿さまに説明したのです。
すると、殿さまは、
「無礼者! 足で説明するとは何事だ!」
と、この息子の態度に殿さまは怒ってしまい、なんと山弥一族に死罪を申しつけたのです。
あまりの事に、恐れおののいた山弥は、
「私の屋敷から城まで、千両箱を並べますゆえ、どうぞ命だけはお助け下さい」
と、必死にお願いしましたが、山弥の願いは聞き入れられず、山弥一族は堀切峠(ほりきりとうげ)で首をはねられたのです。
山弥の屋敷があった大手町には、今ではその跡をしのぶ石の柱が立てられているということです。
おしまい
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