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2008年 4月17日の新作昔話

すぎの木、百本

すぎの木、百本
大分県の民話

 むかしむかし、きっちょむさんと言う、とてもゆかいな人がいました。
 あるとき、きっちょむさんの村でお寺を立て直す事になり、世話人が寄付を集めにきました。
「どうだろう、きっちょむさん。きっちょむさんがうんと出してくれれば、ほかの人だって、負けずに出してくれるはずだ。だからなんとかよろしくたのみますよ」
「いいとも。まかせてくれ」
 きっちょむさんは、世話人の持ってきた帳面に、
《すぎの木、百本》
と、書きました。
「へえっ、すぎの木を百本も寄付してくれるのか」
 世話人は大喜びで、庄屋さんの家に行きました。
「なに、あのけちのきっちょむさんが、すぎの木を百本も寄付するだと!」
 庄屋さんは、びっくりして、
(きっちょむさんより少なくては、恥ずかしいな)
と、思い、しかたなく、
《米、百俵》
と、書きました。
 きっちょむさんのおかげで、村の人はみんな無理をして、たくさんのお金や持ち物を寄付することになりました。
 さて、いよいよ寄付すると書いたものを、集める日がやってきました。
 大勢の人が車をひいて、きっちょむさんの家に来ました。
「すぎの木を百本、どこへ取りに行ったらいいのでしょう?」
 すると、きっちょむさんは、
「どこへも行かんでいい。ここでわたそう」
と、言って、すぎの木のおはしを百本わたしたそうです。

おしまい

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