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2008年 5月8日の新作昔話

悪魔の作った橋

悪魔の作った橋
スイスの昔話

 スイスには、ロイス川というきれいな川があります。
 むかし、この川には橋がありませんでした。
 それというのも、何度橋をかけてみても、あらしや大水で、こわれたり流されたりしてしまうのです。
「このままでは、川の両側に住む人たちがかわいそうだ」
と、村長はみんなと力をあわせて、今までよりもっともっと大きな丈夫な橋をかけました。
 けれど、今までよりもっともっと激しい大水がおそって、橋はまた流されてしまいました。
「ああ、あんなに頑張ったのに、がっかりだな。これではもう、悪魔にでもたのむしかないな」
 すると突然、村長の目の前に大きな男が現れました。
 黒い服、赤いズボン、羽のついたぼうしをかぶっています。
「おう、今、悪魔を呼んだか? おれさまはサタンだ。名前ぐらい聞いたことがあるだろう」
 村長は、びっくりしました。
 サタンといえば、悪魔の王さまの様な存在です。。
「は、はい、たしかにお呼びしました。どうかサタンさまのお力で、ロイス川に、ぜったいこわれない橋をかけていただきたいのです」
「あははははっ、そのくらいお安い御用さ。でもそのかわり、最初に橋をわたったたましいを、おれさまがもらうぞ。いいな?」
「た、たましい! あの、それは困ります。金貨ではだめですか?」
「ふん! そんなもの、悪魔ならすぐつくれる。ほーら、見ていろ」
 サタンはだんろに赤々燃えてる炭を、ちょいとつまみあげると、こわがる村長の手にのせました。
「あつっ・・・くない。おおっ、これはすごい!」
 不思議な事に、炭はキラキラ光る金のかたまりにかわっていたのです。
 目を丸くしている村長に、サタンは言いました。
「それはお前にやろう。橋も今夜中につくってやるから、必ずたましいをよこせよ。忘れるな」
 次の朝、村長がロイス川へいくと、これまで見たこともない、それはそれは立派な橋がかかっていました。
「どうだ! おれさまは、約束を果たしたぞ」
 橋の向こうにサタンが現れて、大声で叫びました。
「そっちも約束通り、立派なたましいを頼んだぞ」
「はいはい、ではさっそく。今から行きますよ」
 村長は、用意してきた大きな袋の口を開けました。
 すると中から、しっぽに黒いリボンをむすんだ犬が飛び出して、
 ワン、ワン、ワン
と、ほえながら、橋の上をかけだしました。
「な、なんだ! おれさまがほしいのは、人間のたましいだぞ。・・・くそっ、悪魔をばかにしやがって。橋をこわしてやる!」
 怒ったサタンは、大きな岩をふりあげました。
と、ちょうどそこに、牧師さんがやってきました。
 牧師さんは、新しい橋にお祈りをするために、大きな十字架をかかげていました。
「わあっ、やめろ! 助けてくれ!」
 サタンは大あわてで逃げだし、それきり二度と戻ってはきませんでした。
 悪魔のつくった橋は、とても丈夫で、どんなあらしや大水にもびくともしなかったので、村人たちは大喜びです。
 でも、村長はサタンにもらった金のかたまりで、大やけどをしてしまいました。
 それは怒ったサタンが、金のかたまりを元の熱い炭にもどしてしまったからです。

おしまい

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