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2008年 5月25日の新作昔話

ざると、たまごと、だるま

ざると、たまごと、だるま
江戸小話

 あるときのこと、ざると、たまごと、だるまが、顔をあわせました。
「よう、久しぶり。どうだ、ひと風呂あびて、さっぱりしてこようか」
「それがいい、それがいい」
 そこで三人はそろって、お風呂屋へでかけました。
 お風呂屋はもう戸を開けていましたが、番台にはだれもいません。
 三人はのんびりと、ゆっくりお風呂に入りました。
「ああ、いいお風呂だった」
 三人が出ようとすると、いつのまにか番台に、お風呂屋のおかみさんがすわっています。
 お金を、払わなくてはなりません。
 ところが三人とも、一文なしです。
 そこで、
「おあし(→お金)を払わないで、ここから出してもらうには、どうしたらよかろう?」
と、相談をしました。
「そうだな。ごにょごにょ、ごにょごにょ。・・・よし、それでいこう」
 相談がきまると、まず始めにざるが、
「おら、ざっと入っただけだから、今日のところは、ただにしてくれや」
と、番台のおかみさんに言って、さっさと出ていきました。
 たまごはたまごで、
「おら、たまたま入っただけだから、今日のところは、ただにしてくれや」
と、さっさと出ていきました。
 お風呂屋のおかみさんが、あとにのこっただるまから三人分のお金をもらおうとすると、
♪だるまに、おあしが、あるものか、ホイ
♪だるまに、おあしが、あるものか、ホイ
と、だるまは、おどりだしました。
 それがおかしくておかみさんが大笑いすると、だるまはおどりながら、そのまま出ていきました。

おしまい

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