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2008年 5月27日の新作昔話

だんなさまの中のだんなさま

だんなさまの中のだんなさま
イギリスの昔話

 むかし、女の子がお手伝いさんになるために、町へ行きました。
 すると、一人のおじいさんが、
「どうか、わしの家で働いてくれ」
と、言って、女の子を家に連れていきました。
 さて、このおじいさんはとてもおかしな人で、家にあるものはみんな別の名前をつけていました。
「さて、わしの事を何と呼ぶかね?」
 おじいさんが言うので、女の子が答えました。
「はい。だんなさまでも、ご主人さまでも、お好きな呼び方をしますわ」
 するとおじいさんは、首を振って言いました。
「それじゃだめだ。わしのことは、『だんなさまの中のだんなさま』と呼べ」
 それから、ベッドを指さして、
「これは、何と呼ぶね?」
「ベッドとか、ねむりいすですか?」
「ちがう。これは、『しがみつき』というもんだ。ところで、こいつは?」
 おじいさんは、自分のはいているズボンをたたきました。
「ズボンとか、パンツとか」
「いいや、これは『ばくちくと花火のつつ』と言うのだ」
 そこへ、一匹のネコがやってきました。
「こいつは何と呼ぶかね?」
「さあ、ネコとか、ニャンコですか?」
「いいや、こいつは『白い顔のわからんやつ』と言うのだ」
 それからおじいさんは火の事を、『かっかときているチャボ』と言い、水の事を、『ピチャピチャしている池』と言い、最後に家の中をぐるっと見て言いました。
「それじゃ、この全部を何と呼ぶかね?」
「部屋とか、家とか」
「だめだ、だめだ。ここは、『せい高山』といわなくちゃいけない」
 さてその晩、ネコの尻尾に火がつきましたので、女の子はおじいさんをたたいてさけびました。
「『だんなさまの中のだんなさま』『しがみつき』から起きて、『ばくちくと花火のつつ』をはいてください。『白い顔のわからんやつ』のしっぽに『かっかと きているチャボ』がつきました。早く、『ピチャピチャしている池』を持ってこないと『せい高山』が、『かっかときているチャボ』になりますよ」
「? ・・・『だんなさまの中のだんなさま』は、わしのことだな。『しがみつき』とは、たしか・・・」
 おじいさんは、自分で名前を付けていたのにそれを忘れてしまい、女の子が何を言っているのかがわからず、考えている間に火が大きく広がって、とうとう家が燃えてしまったのです。

おしまい

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