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2008年 5月31日の新作昔話

意地悪ギツネとりこうなウサギ

意地悪ギツネとりこうなウサギ
イソップ童話

 キツネは、自分のしっぽがとても自慢でした。
 しっぽは先になるほど大きくなっていて、とても強そうに見えるので、ほかの動物たちはよくオオカミと間違えて、顔色かえて逃げて行きました。
 キツネはそれがおもしろくて、その日も弱虫の動物たちをこわがらせてやろうと、野原へ出かけていきました。
 すると向こうから、ウサギがピョンピョンとはねながらやってきました。
「よし、ウサギのやつを、ひとつからかってやろう」
 キツネは自慢のしっぽを振って、見せびらかしながら、
「やあ、ウサギくん」
と、呼びとめました。
 でもウサギは、
「やあ、キツネくん、こんにちは」
と、平気であいさつをしました。
「おや? ウサギくん、よく逃げないね。森の動物たちはぼくのしっぽを見ると、みんなこわがって逃げていくのに」
 キツネは、がっかりしていいました。
「そうかい。でも、ぼくだってきみと同じだよ。ぼくの長い耳を見ると、みんなこわがって逃げていくんだよ」
「うそつけ! きみの耳なんか、こわがるものがいるものか!」
「本当さ。みんな逃げていくぜ」
「きみを見て逃げだすのは、トカゲか小鳥くらいのものさ。きみの耳なんか、ちっともこわくないじゃないか」
「だって、逃げていくぜ。ニワトリだって、ヒツジだって」
「それが本当なら、見たいものだね」
「いいよ。見せてあげるから、一緒においでよ」
 そこで二匹は、まずニワトリのところへ行きました。
 ニワトリたちは、囲いの中で仲よくエサをついばんでいましたが、ウサギとキツネの姿を見るとこわがって、羽をバタバタさせて飛びあがったり、悲鳴をあげてあっちこっちと逃げまわるのでした。
 それを見たキツネは、
「変だな、きみの耳が、そんなにこわいかねえ」
と、首をかしげましたが、
「まあ、ニワトリは、あわてものだからね」
と、いいました。
 今度は、ヒツジのところへ行きました。
 ヒツジたちは、大きな囲いの中でメエーメエーと鳴きながら、のんびり遊んでいましたが、二匹の姿を見ると大さわぎになりました。
 逃げようとして、たがいにぶつかったり、はねたり、転んだりして、まごつくばかりです。
 それでキツネも、
「本当だ。本当に、きみに耳を見てこわがっている。うたがってごめんね」
と、あやまり、それからはウサギをばかにしなくなりました。
 でも本当は、動物たちがこわがったのはウサギの方でなく、一緒にいたキツネの方だったのです。

 かしこい人は他の人をうまく利用して、自分の手柄のように見せるものです。

おしまい

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