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2008年 6月4日の新作昔話

二匹のよくばり子グマ

二匹のよくばり子グマ
ハンガリーの昔話

 むかしむかし、深い森のはずれにクマの親子が住んでいました。
 二匹の子グマと、お母さんグマです。
 子グマたちは大きくなると、世の中へ出て、しあわせをつかもうと思いました。
 子どもたちの願いを、お母さんはゆるしてくれました。
「いいですとも、いっておいで。でも、どんなことがあってもけんかをしてはいけませんよ。けんかをすれば、損をしますからね」
「大丈夫。ぼくたち仲良しだから、けんかなんかするものか」
 二匹の子グマは、元気よく旅に出かけました。
 朝から晩まで歩き、次の日も、朝から晩まで歩きつづけました。
 そうやって旅をつづけているうちに、お母さんにもらった食べ物がなくなってしまいました。
 二匹の子グマは、トボトボと重い足をひきずっていきました。
「ああ、兄さん、ぼく、もう歩けないよう。朝から何も食べていないんだもの」
と、弟グマがなきだしました。
「ぼくだって同じだ。腹がへって死にそうさ」
 兄さんグマも、ためいきをつきました。
 それでも二匹は、ノロノロと歩きつづけました。
 すると道のまん中に、赤い大きな丸い物がおちています。
「なんだろう?」
 子グマたちは、いそいでそばへいってみました。
 するとそれは、大きなチーズではありませんか。
 二匹は大喜びで、さっそくチーズをわけようとしました。
 ところが、兄さんグマも弟グマも、自分がわけなければ、もらう分が少なくなって損をすると思ったのです。
「ぼくがわけてやる」
「いやだ。ぼくがわける」
 チーズをそばにおいて、二匹は口げんかをはじめました。
 そのとき、ヒョッコリとキツネのおばさんがやってきました。
「まあ、まあ、子グマさんたち。けんかはおやめなさい。何をそんなにおこっているの?」
 そこで子グマたちは、わけをはなしました。
 するとキツネは、笑っていいました。
「おや、そんなことだったの。それなら簡単よ。おばさんにチーズをかしてごらん。上手にわけてあげますよ」
「ああよかった。でも、同じ大きさにしておくれよ」
「きっとだよ」
 兄弟はそういいながら、喜んで丸いチーズをキツネにわたしました。
 キツネはチーズをうけとると、二つにわりました。
 見ると、ひとつの方が大きいのです。
 子グマたちはさけびました。
「あっ、あんなに大きさがちがうよ」
 するとキツネは、ニヤリとわらいました。
 このキツネはずるいやつで、わざと片方を大きくしたのです。
「まあまあ、ぼうやたち、さわがないで大丈夫よ。おばさんがうまくしてあげるから」
 そしてキツネは、大きい方にガブリとかみついて、かなり食べてしまいました。
「あ、あ、そっちが小さくなっちゃった!」
 子グマたちは、さけびました。
「平気、平気。それなら今度は」
と、いいながら、キツネはまた別の方をかじりました。
 すると、そっちが小さくなりました。
「あ、あ、あ、そっちが小さくなっちゃった」
「いいの、いいの」
 キツネはしらん顔で、あっちをかじったり、こっちをかじったり。
 そしてやっと同じ大きさになったときには、チーズはちっぽけなかけらになっていました。
「さあ、これでいいでしょう。さようなら」
 キツネは大きくなったお腹をさすると、さっさといってしまいました。

おしまい

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