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2008年 6月15日の新作昔話

泳ぎの名人

泳ぎの名人
江戸小話

 あるとき、江戸の大川(おおかわ)の橋を一人の男が通りかかりました。
 男がふと川を見ると、人が水面(すいめん)に浮かんで、川下へと動いているのが見えました。
 不思議に思ったこの男は、さっそく近くの茶店の主人にたずねることにしました。
「ついいましがた大川で、うつむけになって身動き一つせずに、遠方まで泳いでいった人を見ましたが、あのように上手に泳げるものですかのう。あれは、よほど泳ぎの名人と見ましたが、一体、なんというお方じゃろう。わしは泳ぎが下手なもんで、ぜひとも泳ぎをおしえてほしいものじゃ」
 すると茶店の主人はあきれた顔をして、こう答えました。
「ああ、おおかたそれは、土佐衛門(どざえもん)でございましょう」
「おお、土左衛門と申すお方ですか。して、住まいはどこですかな? すぐにでも、教えをこいたいものだ」
 茶店の主人は困った顔で、
「住まいは、あの世です」

※江戸時代の力士であった成瀬土左衛門(なるせどざえもん)の、ぷっくりと太った体つきが、おぼれて死んだ水ぶくれの姿にそっくりだったので、おぼれ死んだ人のことを土左衛門と呼ぶようになったそうです。

おしまい

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