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2008年 6月19日の新作昔話

月の形をしたおみやげ

月の形をしたおみやげ
中国の昔話

 むかしむかし、仕事で都へ行くだんなに奥さんが、
「お土産に、象牙のくしを買ってきてくださいな」
と、頼みました。
「ああ、いいよ。それで、どんな形のがいいかい?」
「そうねえ。あんな形がいいわ」
 ちょうど空に出ていた三日月を指さして、奥さんが言いました。
「わかった。お月さんの形がいいんだな」
 さて、都での仕事が終わっただんなは、奥さんに頼まれた事を思い出しました。
 空を見上げると、まん丸い月が出ていました。
「確か、あの形の物だったな」
 だんなはくしということを忘れて、丸い月の形をしたかがみを奥さんのおみやげに買いました。
 かがみを見た奥さんは、
「くしを買わずに、どうしてこんな女を買ってきたの!」
と、カンカンに怒り出しました。
 実はこの頃、かがみは大変珍しい品物で、この地方の人はかがみを知りませんでした。
 初めてかがみを見た奥さんは、かがみにうつった自分を見て、だれかが入っていると勘違いしたのです。
「なにを言う、おれはお前の言っていた物を買ってきてやったんだぞ!」
 とうとう夫婦げんかになったので、おばあさんが止めに入り、そして原因のかがみを見て言いました。
「おやまあ、どうして、こんなババアを買ってきたんだい!」
 大騒ぎになったので、役人がやってきました。
 そして役人は、かがみを見て言いました。
「わざわざおれが来てやったのに、どうして他の役人を呼んだんだ。けしからん!」
「役人? 違う違う、それは月の形をした土産だ!」
「うそよ! 女を買ってきたのよ!」
「何をいっているんだい。それはババアだよ!」
 騒ぎは収まるどころか大きくなる一方で、とうとう裁判になりました。
 裁判官が、問題のかがみを見て言いました。
「わしの他に裁判官がいるとは、まったくけしからん!」
 この騒ぎ、いつになったら終わるのでしょうね。

おしまい

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