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2008年 6月20日の新作昔話

旅人のゆめくらべ

旅人のゆめくらべ
フランスの昔話

 むかしむかし、三人の旅人が、いなかの道を都へ向かって歩いていました。
 お昼になったので、三人は食事をしようと、腰をおろしました。
 ところがのこった食べ物は、パンがあと一つだけです。
 そこで、一人がいいました。
「たった一つのパンを、三人でわけたってしかたがないな。それよりも一人だけがそっくり食べる方がいいだろう。これから三人で昼寝をして、一番すばらしいゆめを見たものが、パンを食べることにしてはどうだろう?」
と、いいだしました。
 ほかの二人もそれに賛成して、ゆめくらべをすることになりました。
 さっそく三人は、道ばたの木のかげへいって、草の上にねころびます。
 そしてみんないびきをかいて、グッスリとねむってしまいました。
 しばらくたって、昼寝からさめた三人は、
「ああ、よくねむった。さて、おたがいにどんなすばらしいゆめを見たかな」
と、ゆめの話しをはじめました。
 三人のうち、二人は町の商人で、一人は村のお百姓でした。
 おしゃべり上手な商人の一人が、最初に話しはじめました。
「わしはな、天国へ行ったゆめを見たよ。天の使いの鳥にのって行ったんだ。天国はキラキラしていて、どこもかしこも金色に美しく光っていた。そしてすばらしい音楽が聞こえ、きれいな花がいっぱいに咲いていた。心をあらわれるような、よいかおりがただよっていて、本当にすばらしいところだったよ」
 おしゃべり上手な商人は、得意になってそんなゆめのはなしをしました。
 すると、もう一人の商人もまけずに、
「わたしはな、もっとかわったところのゆめを見たよ」
「どんなところだい?」
「地獄へ行ったゆめさ。地獄はやっぱり、すごいところだったなあ。こわい顔の地獄の王さまや家来のオニたちがいばっていた。そして悪いことをして地獄へやられた人々が、オニたちにぶたれたり、池へおいこまれたりしながら、苦しそうにしていたよ」
 そんな地獄のゆめを、上手に話しました。
「今度は、あんたの番だよ」
と、いわれた三人目のお百姓は、
「うん」
と、いったきりで、しばらくだまっています。
 ところがふいに、そのお百姓は三人の前においてあるパンをとると、自分一人でムシャムシャと食べてしまいました。
「あれっ?」
 ほかの二人はビックリして、
「だれのゆめが一番すばらしいか、まだきまっていないのに、パンを食べてしまうとはどういうことだ!」
と、おこりました。
 すると、お百姓は、
「うん、わたしはね、あんたたちが天国や地獄へ行くゆめを見たんだよ。天国や地獄へ行った人は、もうもどってはこないだろうと思ってね、のこったパンを食べてしまったのさ」
 ほかの二人は、思いがけない答えに、
「これはやられたな」
と、ちょっぴりくやしそうな顔をしましたが、すぐに笑い出しました。
「天国や地獄はとおくても、都まではもうすぐだ。さあ、はやく都へいって、うまいものを食べよう」
 そういうと、また一緒に旅を続けました。

おしまい

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