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2008年 6月23日の新作昔話

うそつきの落ち橋

うそつきの落ち橋
ロシアの昔話

 むかしむかし、あるところに、とてもうそつきの男がいました。
 ある日、道ばたでむかしの友だちに出会いました。
「やあ、しばらく顔を見せなかったようだが、どこか旅行でもしていたのかい?」
「うん、遠い国を旅していたのでね」
 男が言いました。
「へええ、そいつはすごいや。それで、いったいどんなところだね?」
 友だちがうらやましそうにたずねると、男は自慢げに。
「なんともすばらしい国でね。一日中夜が来ないから明かりもいらない。一年中あたたかで、果物も野菜も食べきれないほどとれるのさ」
「なるほど、不思議な国だね。とてもぼくなんか行けそうもないよ」
「そりゃそうだろう。この村で行った者は、まだだれもいないからな」
 男は友だちをばかにして、むねをはりました。
 すると、友だちが言いました。
「でもね、ぼくらの村にも不思議な橋が出来たんだよ。ほら、向こうに見えるあの橋。正直な人がわたると何でもないのに、うそつきがわたると水の中に落ちるんだって」
「なに! うそつきの落っこちる橋だって!」
「そうだよ。ところできみの行った国には、どんな家がたっていたんだい?」
「うん、山ほど、大きな家・・・」
と、言いかけて、男はだんだん声が小さくなり、
「いや、山ほどでないかもしれない。二人が入っただけで、いっぱいになってしまう家もあったような気がする」
「一年中あたたかくて、どんな果物がとれるんだい?」
「そりゃ、いろいろとれるが、たまには少ししかとれない年もあるそうだ」
 さっきの話とちがって、男の話はすっかり小さくなってしまいました。
「それじゃ、二人であの橋をわたってみようよ。ぼくたちは落ちる心配がないからね」
 友だちが言うと、男は急に青くなり、
「いや、わざわざ橋なんかわたりに行かなくても、川の浅いところをわたる方が早いよ。あっ、急用を思い出したから、それじゃあ!」
と、言って、逃げていったということです。

おしまい

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