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2008年 6月26日の新作昔話

おしゃべりな王さま

おしゃべりな王さま
インドの昔話

 むかしむかし、ある国に、とてもおしゃべりな王さまがいました。
 朝から晩までおしゃべりばかりしていて、王さまの仕事は何もしません。
「さて、王さまのおしゃべりをやめてもらう、よい方法はないものか」
と、家来たちはこまっていました。
 ちょうどそのころ、ヒマラヤの山奥の池に、一匹のかめがすんでいました。
 ある日、二羽の白鳥がとんできて、かめと友だちになりました。
「かめさん、わたしたちの家へ遊びに来ませんか? わたしたちの家は金色のほら穴で、とてもすてきなところですよ」
 すると、かめが言いました。
「行きたいなあ。でも、わしはお前さんたちと違って、空をとぶことができない」
「大丈夫。わたしたちが、連れていってあげますよ」
「そうか、それならぜひ連れていってくれ」
 そこで二羽の白鳥は、一本の棒きれをさがしてきました。
「さあ、この棒きれをしっかりくわえてください。どんなことがあっても、口を開いてはいけませんよ」
「わかった。ぜったいに口を開かないよ」
 かめが棒きれをくわえると、二羽の白鳥は一羽ずつその両端をくわえて空へとびたちました。
 かめは風をきって、ぐんぐんのぼっていきます。
(わあ、なんて気持ちがいいんだ)
 うっとりしていたら、下の方から人間の子どもの声がしました。
「あっ、白鳥が、かめを下げてとんでいるよ!」
「本当だ! かめのくせに、なまいきだ!」
 ほかの子どもたちも、空を見上げて言いました。
 それを聞いて、かめは腹をたてました。
(わしは友だちの家へつれていってもらうところだ。よけいなことを言いやがって)
 かめは白鳥との約束をわすれて、思わずどなりつけました。
「うるさい!」
 そのとたん、くわえていた棒きれから体がはなれて、葉っぱみたいにくるくるとまいながら、下へ落ちていきました。
 ドッシーーン!
 かめの落ちたところは、王さまのいるお城の庭でした。
「なんだ! かめが空から落ちてきたぞ!」
「かわいそうに、背中が割れて死んでしまった」
 お城では、大変なさわぎになりました。
 王さまもそのさわぎを聞いて、庭へ出てきました。
「どうして、空からかめが落ちてきたのか?」
 おしゃべりな王さまは、家来のお坊さんにたずねました。
 このお坊さんは偉いお坊さんで、そのわけをちゃんと知っていました。
(いまこそが、王さまのおしゃべりをなおす時だ)
 そこで、かめがどうして空から落ちたのか、くわしくわけを話してから言いました。
「いいですか、王さま。このかめは、口をきいてはいけないときにおしゃべりをしたから、こんなことになったのです。やたらとおしゃべりする人は、みんなこのかめのようになってしまいます」
 それからというもの、王さまはよけいなおしゃべりをしなくなったということです。

おしまい

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