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2008年 7月21日の新作昔話

蛇になった娘

蛇になった娘
鹿児島県の民話

 むかしむかし、上野の村に、七つになっても歩けない娘がいました。
  ある日のこと、その娘は母親に、
「花ダンゴが食べたい」
と、ねだりました。
  母親が娘に花ダンゴをあたえると、不思議な事に花ダンゴを食べたとたん娘は歩けるようになって、家から半里(はんり→約2キロ)もはなれた湖へ、水くみにでかけたのです。
  心配した母親があとをつけましたが、たしかに水をくんでいます。
  ところが、母親に見られた事を知った娘は、
「見られたからには、もう家へは帰れない」
と、言って、湖の中へ入っていったのです。
  母親が悲しいんでいると、湖から鏡のようにピカピカと光る目玉を持った大蛇が現れました。
  母親がびっくりして逃げようとすると、
「お母さん、私です。そんなに怖がらないで。大蛇になったけれど、来年の今日にはかならず、親孝行にまいります」
と、大蛇が言ったのです。
  しかし、大蛇に驚いた母親は、
「ああ、娘よ、そんな姿では、お前はもう娘ではない。もう二度と帰らんでもいい」
と、叫んで、家へ逃げ帰ったのです。
  それから一年後、娘の帰ってくる日になると、母親は恐ろしさのあまり家中の戸を締めきって部屋に閉じこもり、ガタガタとふるえていました。
  すると、
「お母さん、お母さん」
と、約束通り、娘がやってきたのです。
  でも、家の戸がかたく閉まっているため、家の中へ入れない娘は外で泣きながら、
「お母さん、どうか戸を開けてください」
と、言いました。
  しかし母親は、戸をしっかりとおさえて、
「娘よ、大蛇になったお前に、戸を開けることはできない。悪いが、もう帰っとくれ! 二度と、姿を見せないでおくれ!」
と、大声でさけびました。
  すると大蛇の娘は泣きながら、
「わかりました。お母さんがそう望むなら、もう二度と姿を見せません。・・・いままで育てていただき、ありがとうございました」
と、言うと、さびしそうに湖に消えていき、二度と姿を現さなかったということです。

おしまい

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