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2008年 7月28日の新作昔話

人食いウサギ

人食いウサギ

 むかしむかし、ある村に一人のお坊さんがやってきて、
「お宮の社に、毎晩もちをそなえなさい。そうしないと、悪いことがおきるであろう」
と、いいました。
  心配した村人たちは、さっそくもちをついてお宮の社にそなえました。
  ところがどうしたことか、もちを持っていった人がもどってきません。
「どこへいったのだろう?」
  みんなであちこち探してみましたが、どこを探しても見つかりません。
「お坊さんのいった様に、悪いことが起き始めているのかもしれん。早くもちをそなえないと」
  そこでまたもちをついて、お宮へ持っていきました。
  するとやっぱり、もちを持っていった人がもどってきませんでした。
「大変だ! これはえらいことになったぞ」
  村はたちまち、大騒ぎになりました。
  再びもちをそなえようと言うことになりましたが、誰もが、もちを持って行くのを嫌がりました。
  でも、もちをそなえないと、どんなことがおきるかわかりません。
  そこで仕方なく、くじびきでもちをつくことにして、そこの家の者がお宮へ持っていくことにしました。
  しかしまたもや、もちを持っていった人は、誰一人戻ってきませんでした。
「このままでは、村の人たちがみんないなくなってしまうぞ」
「よし、おれたちでなんとかしよう」
  ある日、勇気のある若者が二人して、
「今夜は、おれたちがもちをついて持っていく」
と、いいました。
  さて、その日の夜。
  二人はもちをついて袋に入れて、お宮に出かけました。
  二人はお宮の社の前にもちの袋をおき、すばやく木の後ろにかくれました。
  すると、丸々と太ったウサギがたくさん出てきて、口ぐちになにやらとなえながら、月を見あげては頭をさげます。
「なんて、でっかいウサギだ」
「しかし、あのウサギたちが村人たちを?」
  二人がじっと見ていると、一匹のウサギが人間の声で言いました。
「もちを持ってきた奴はどこへいった? はやく見つけて食べてしまえ!」
  それを聞いた二人の若者は、おもわず顔を見合わせました。
(やっぱり、あいつらがもちと人間を食べていたんだ)
  二人は死にものぐるいで駆け出し、村へもどってきました。
  すぐに村の人たちにわけをはなして、おそろしいウサギをやっつける相談を始めました。
「しかし、このままわしらがいってもだめだ。なにしろ、人間を食べるウサギだからな」
「それなら、どうやってやっつけようか?」
  みんなが考え込んでいると、だれかがいいました。
「犬はウサギを捕まえるぞ。だから、ばあさんのところの犬を連れていけばいい。あの犬ならウサギをやっつけてくれるかもしれないぞ」
「なるほど、あの犬なら大丈夫だ」
  そこで二人の若者は、犬を飼っているおばあさんのところへいきました。
「ばあさん、この村の人やもちを食べたのは、ウサギの化け物だということがわかった。ばあさんのところの犬は、いつも山でウサギを捕まえてくるだろう、だからきっとウサギをやっつけてくれると思うのだ。だから、わしらに犬をかしておくれ」
「そうか。そんならつれていくがよい」
  おばあさんは気持ちよく、犬をかしてくれました。
  二人の若者は犬をつれて、再びお宮にいきました。
  ウサギたちは、まだ袋のもちを食べています。
  二人はウサギたちにそっと近づくと、犬を放ちました。
  ワンワンワンワン!
  そのとたん、犬はウサギに襲いかかり、するどいキバで次々とウサギをかみ殺しました。
  するとその騒ぎを聞きつけたのか、社の中からお坊さんが姿を現しました。
「あっ、あのお坊さんは!」
「そうだ。たしか、もちをそなえるようにいったお坊さんだ」
  二人がびっくりしていると、犬はお坊さんめがけてとびかかりました。
「うぎゃーー!」
  お坊さんはするどい悲鳴をあげたかとおもうと、たちまち大ウサギの姿にかわりました。
  大ウサギは犬の三倍ほどもありましたが、犬はウサギの一瞬のすきをついて、ウサギの喉を噛み切りました。
  こうして犬のおかげで、おそろしいウサギたちは退治されたのです。
  後で村人たちが社の中を調べると、今までに行方不明になった人たちも含めて、白骨となった人間の骨が山のように出てきたと言うことです。

おしまい

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