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2008年 8月1日の新作昔話

お金を取りに来た幽霊

お金を取りに来た幽霊

 むかしむかし、ある山里の娘が、町へ働きにいきました。
 店の人たちにも可愛がられ、とてもよく働く娘でしたが、三年もたたないうちに胸の病(やまい)にかかってしまいました。
「約束の給金(きゅうきん)の他に、これは薬代だよ。病がなおったらまたきておくれ」
 店の主人にいわれて、娘はなくなく山里へ帰りました。
 娘のとなりの家には、家からはなれた山の畑に小屋を作ってくらす男がいました。
 男は娘が、町からまとまったお金を持ち帰ったらしいといううわさをきいて、
「となり同士のよしみで、三両ほど貸してもらえんだろうか?」
と、頼み込みました。
「いいえ。これは薬を買う大事なお金ですから、お貸しすることは出来ません」
 三両といえば、娘が持っているお金の全部です。
 娘は断ったのですが、何度も何度もやってくる男にまいってしまい、
「薬代は、月に一両はかかります。二両お貸ししますが、来月には必ず返してください」
と、二両を貸し与えました。
 ところが約束の日がきても、男はお金を返しません
 薬が買えない娘の病は重くなり、とうとう起き上がることも出来なくなってしまいました。
「はやく、はやく二両を返してください。病をなおして、町のお店で働きたいのです」
 娘は、うわごとを繰り返すようになりました。
 娘の親は可哀想で、見ていられません。
 そこで山の畑の小屋の男のところへ、毎日さいそくにいきました。
 でも男は、
「明日、明日。明日には返すから」
と、一日のばしの返事を繰り返すだけです。
 そうしたある日、男が小屋で晩飯を作っていると、となりの家の娘が雨の中をやってきて、
「今日は、どうしても返してください。もう、行かないといけないのです」
と、力のない声でいいました。
 娘の顔色は青ざめ、長い髪は雨でぐしょぬれです。
 男はおそろしくなって、
「わ、わかった。いま工面してくるから、待っていてくれ」
 そして仲間の小屋をいくつもまわって、お金をかきあつめました。
 娘はそのお金をにぎりしめると、だまって、すーっと小屋から出ていきました。
「もう起き上がれないほど悪いと聞いておったが、よく、ここまで来られたな」
 その晩の夜遅く、男のもとにとなりの家の娘の親から、使いがやってきました。
 話を聞くと、男がちょうどお金を返した時刻に、娘が息を引き取ったということです。

おしまい

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