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2008年 8月4日の新作昔話

お化けの出る屋敷

お化けの出る屋敷
東京都の民話

 むかしむかし、江戸(えど→東京都)の四谷(よつや)というところに、喜右衛門(きえもん)という小鳥の店をしている男がいました。
 めずらしい小鳥がいるというので、わざわざ遠くから買いにくるお客もあって、店はなかなかに繁盛(はんじょう)していました。
 あるとき、上品な身なりの侍が店にやってきました。
「うむ、色つやもよく、これはいい。いくらだ?」
 この当時、侍たちの間では、うずらを飼って自慢しあうことがはやっていたのです。
「はい、三両二分ですが、三両にしておきましょう」
 喜右衛門がいうと、
「よろしい、買い受けよう。だが、手元には二両しかない。ごくろうだが麻布(あざぶ)にあるわしの屋敷へうずらを届けがてら、残りの一両を取りに来てくれないか」
「はい。いいですとも。今夜にでもお届けしましょう」
 それを聞くと侍はよろこんで、自分の屋敷のあるところを教えて帰っていきました。
 さて、その晩のこと。
 喜右衛門はうずらのかごをもって、侍の屋敷に出かけました。
 思った通りの立派な屋敷で、声をかけると、すぐに昼間の侍が出てきました。
「おう、待っていたぞ」
 侍はうずらのかごを受け取ると、喜右衛門を広い部屋につれていき、
「しばらくここで、待っていてくれ」
と、いって、奥へ姿を消してしまいました。
 喜右衛門が部屋を見まわしてみると、天井やたたみに雨もりのあとがあり、柱も少し傾いています。
 それに入るときは気がつきませんでしたが、ふすまのあちこちも破れたままです。
(なんだ、なんだ。立派な屋敷と思っていたけど、中はひどいもんだ。この様子では、あまりくらしが楽じゃなさそうだ。うずらを持っていったけど、ちゃんと残りの代金を払ってくれるんだろうか?)
 心配しながらすわっていると、いつの間にか十才くらいの男の子が目の前に立っています。
「ああ、びっくりした! 坊や、部屋に入るときは声ぐらいかけるもんだよ」
 お客の子どもをしかるわけにもいかないので、喜右衛門はやさしくいいました。
 ところが男の子は返事もしないで、床の間の方にいくと、かけじくをくるくるとまきあげて、ぱっとはなしました。
(まったく、しょうがない子どもだ)
 喜右衛門がだまってみていると、男の子は何度も何度も、同じ事を繰り返します。
 喜右衛門はついにがまんが出来ずに、男の子にいいました。
「いいかげんに、やめたらどうだい。そんないたずらをすると、かけじくが痛んでしまうじゃないか」
 そのとたん、男の子が手をとめて、クルリと振り返って言いました。
「うるさい! だまっとれ! お前の知った事か!」
 なんと男の子の顔には、目がひとつしかありません。
「お、お前は、ひとつ目小僧!」
 いったきり喜右衛門は、気を失ってしまいました。
 部屋にもどってきた侍は、倒れている喜右衛門を見てびっくり。
 すぐにカゴ屋をよんで、喜右衛門を店まで送り届けさせました。
 店に戻った喜右衛門は、ようやく気がついたものの、そのまま寝込んでしまいました。
 次の日、侍の屋敷から使いの男が、うずらの残りの代金を届けにきました。
 男は、喜右衛門のまくらもとに座っていいました。
「じつは、わたしどもの屋敷では一年に四、五回はあやしいことがおきます。この前もご主人の部屋に、頭をつるつるにした小坊主が現れて、お菓子を盗み食いしていました。それを見たおかみさんが、びっくりして声をあげようとしたら、いきなり、『だまっていろ!』と、いって姿を消しました。古い屋敷なもので、どうやら化け物がすみついているらしいのです。といって、屋敷をたてかえる金もなく、そのままがまんしています。このことが世間にしれたらなんといわれるか。どうかお願いですから、だれにもいわないでほしいのです」
 それを聞いて喜右衛門は気の毒に思い、家の者以外には決してこの事を話しませんでした。
 その後、喜右衛門は二十日ほど寝込んでいましたが、すっかり元気になったという事です。

おしまい

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