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2008年 8月16日の新作昔話

死なないお坊さん

死なないお坊さん
東京都の民話

 むかしむかし、十八歳のときから合戦に出て、いくつもの手柄をたてていた武士がいました。
 ところが三十三歳になったとき、人が殺しあうむなしさを感じて、とつぜん頭をそってお坊さんになってしまいました。
 それからは法然上人(ほうねんしょうにん)の教えを守って、きびしい修行を重ねていました。
 出家してから、四十六年がたった年のことです。
 お坊さんは三十七日間、一日中、お経を唱える行をしました。
 そしてそれが終わった日の夜のことです。
 お坊さんは、
「この世は、嫌な事ばかりじゃ! 生きていても仕方がない!」
と、大きな声で言うと、刀で自分のお腹を切って手を突っ込み、内臓をわしづかみにして引っ張り出すと、お寺の裏にある川へ捨ててしまったのです。
 ところが不思議なことに、お坊さんは死なずに生きていました。
 それどころか何の痛みもなく、普通の人とかわったところはありません。
「ああ、なんと言うことだ。なぜ死ぬことが出来ぬ。三十七日間も祈りつづけたせいなのか」
 自分がまだ生きていることを知ると、思い通りに往生(おうじょう)出来なかったことを悔やみました。
 さて、年が新しくかわった正月のある夜のことです。
 自分が尊敬している法然上人の声が、夢の中で聞こえてきて、
「十五日の夜、必ず迎えにいこう」
と、告げられたのです。
 いよいよその日の夜がくると、お坊さんは極楽浄土があるという西の方角に向かって正座しました。
 そして手をあわせながら念仏を唱えていましたが、日が変わる少し前、お坊さんは静かに息を引き取ったのです。

おしまい

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