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2008年 9月6日の新作昔話

猫神(ねこがみ)

猫神(ねこがみ)
長崎県の民話

 むかしむかし、佐世保(させぼ)の黒髪町(くろかみちょう)に、一人の侍がいました。
 侍の家には身重の奥さんと女中、それに、たまという名の猫が一匹、みんな仲良く暮らしていました。
 とくに侍夫婦は大の猫好きで、二人の可愛がりようは大変なものでした。
 その頃、里では大イノシシが現れては、田畑を荒らしていました。
 百姓たちは困り果てて、侍にイノシシ退治を頼んだのです。
 その夜、侍は弓矢を持ってイノシシ退治に出かけました。
 ところが奥さんは、心細くてなりません。
 なぜなら、お腹の赤ちゃんが、今夜あたりにも産まれるような気がしたからです。
 それに女中も里帰り中で、家には誰もいなくなってしまうからです。
「どうか、今夜は家にいて下さいませ」
 奥方はそう言いましたが、侍は、
「なに、すぐ戻ってくる」
と、出かけてしまいました。
 さて、里のはずれの湯田(ゆだ)の尾の池まで来た侍は、木陰に身をひそめてイノシシが現れるのを待っていました。
 するとそのとき、後ろで何やら気配がします。
 はっと弓をかまえてふり向くと、なんとそこには、里へ帰っているはずの女中が立っていたのです。
 女中は、いかにも何かを訴えるように、こちらに近づいてくるのです。
「妙だな、さては噂にきくタヌキか。よし、手はじめに、まずはこのタヌキから」
侍はとっさに弓矢をとると、女中めがけて矢を放ちました。
「ぎゃーーーっ!」
 確かな手ごたえを感じた侍がそこへ行ってみると、そこには血の跡しかありません。
「逃がさぬぞ!」
 侍が血の跡をたどってどんどん進んでいくと、なんと自分の家まで続いていたのです。
「もしや、妻の身になにか!」
 侍が家に飛び込むと同時に、家の中には、
「オギャー、オギャー」
と、いう、赤ん坊の泣き声が響きました。
「おおっ、生まれたか!」
 侍はタヌキの事は忘れて、無事に赤ちゃんを産んだ妻の介抱をしました。
 さて翌朝、再び血の跡をたどっていった侍は、血の跡が続いている床の下をのぞいてびっくりです。
 なんとそこには可愛がっていた猫のたまが、矢が刺さったまま死んでいたのです。
 猫のたまは女中に身を変えて、奥さんの出産を知らせに行ったのでした。
「そうか。そうだったのか。たまよ、許してくれ」
 侍は祠(ほこら)を立てて、たまの霊をなぐさめました。
 これが黒髪町(くろかみちょう)に残っている『猫神さま』と呼ばれる祠で、今も猫を可愛がる人のお参りが絶えないそうです。

おしまい

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