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2008年 9月8日の新作昔話

タコの足とクモの足

タコの足とクモの足
東京都の民話

 むかしむかし、江戸のあるお寺に、和尚さんの身のまわりの世話をしている、忠助(ちゅうすけ)という十三歳の小僧がいました。
 この忠助は手足にイボがたくさん出来て、とても困っていました。
 ある日の事です。
 忠助は和尚さんのすすめで、目黒(めぐろ)の蛸薬師(たこやくし)にお参りに出かけました。
 蛸薬師にお祈りすればイボがとれると、和尚さんにいわれたからです。
 さっそく忠助は、手をあわせて一心に祈りました。
「もし、わたしの手足からイボをとってくださいましたら、一生、タコは口にしません。また、薬師さんへのお経を、一日二十回ずつ唱えます。ですからどうぞ、イボをとってください」
 忠助はそう祈って、タコの絵馬をお堂におさめてきました。
 さて、その日から忠助は日に二十回ずつ、一心にお経を唱えました。
 するとわずか四日目には、手足のイボが、すっかりなくなっていたのです。
 忠助は大喜びでしたが、六日目の朝に目をさますと、また手足のイボは元にもどっていたのです。
「そんな。どうして・・・。あっ!」
 よく考えてみると、イボがなくなった次の日から、お寺の用事が忙しくなったため、日に二十回唱える約束のお経を忘れていたのでした。
 忠助はあわてて、再びお経を唱えました。
 それも日に二十回ではなく、十倍の二百回、お経を唱える事にしました。
 するとイボは少しずつ消えていき、百日ほどがすぎた頃には、すっかりなくなったのです。
 そのころ、ある町にすむ大工さんが、やはり手足にたくさんのイボが出来て困っていました。
 ある人から、目黒の蛸薬師へお願いすればいいとすすめられたのでやってきたのです。
 そして、
「どうか、イボをとってください。これからは一生、タコは口に・・・」
と、言いかけて、大工さんは考え直しました。
(まてよ。タコを口にしないのは困りものだな。なにしろタコは、酒の肴(さかな)に最高だからな。ここはひとつ、タコではなくて他の八本足で)
 そこで大工は、お願いの言葉を言い換えました。
「どうか、イボをとってください。これからは一生、クモは口にしませんので」
 後からそれを聞いた大工仲間は、あきれた顔で言いました。
「お前は、何を考えておるんじゃ。それでは反対に、薬師さんのばちがあたるぞ」
 その通りで、大工さんの手足に出来ていたイボは、ますますひどくなったという事です。

おしまい

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