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2008年 9月11日の新作昔話

桜島大根汁

桜島大根汁
鹿児島県の民話

 むかしむかし、二人の仲のよい兄弟が、それぞれの家を持って住んでいました。
 弟は、なかなかの働き者で、その日も朝早くに起きては、おいしい桜島大根を煮ていました。
 そこへにおいにつられたなまけ者の兄がやってきたので、弟は煮えたばかりの桜島大根を食べさせてやったのです。
 すると兄は、
「こら、うまか大根じゃ。どうやって作った?」
と、たずねるので、弟は笑いながら、
「簡単じゃ。このなべは大根を入れておくだけで、こげにうまく煮えるんじゃ」
と、答えたのです。
 さて、兄はなべを弟から借りてかえって、さっそく桜島大根を放り込みました。
「火をたかんでも、ええちゅうことじゃし、一寝入りするか」
と、そのままグーグーと寝てしまいました。
 さて、しばらくして起きた兄は、桜島大根の様子を見てびっくり。
「なんじゃ。ぜんぜん煮えんと、プカプカ浮いとるだけだ」
 兄は頭をかしげながら、弟の家に桜島大根の煮かたを教えてもらいに行きました。
 すると弟は、笑いながら、
「兄さん、いくらよかなべでも、大根を切って入れるだけじゃ、煮えんよ」
 弟は桜島大根の煮かたを、ていねいに教えてやりました。
「まずは朝はように起きて、なべにたっぷりの水と大根を入れて、木の枝をくべるんだ。そいで、川の土手に行って牛のエサになる草をカゴいっぱいに切って帰ってくる。すると、うまか大根が煮えとるだ」
 さあ、それを聞いた兄は、うまい桜島大根を食べたい一心で、翌朝早くに起きてなべにたっぷりの水と桜島大根を入れると、木の枝に火をつけてぐつぐつと煮始めました。
 そして眠い目をこすりながら、牛のエサになる草を切りに出かけたのです。
「ああーっ、眠いけんど、草をからんと大根が煮えんでのう」
 やっと草がカゴいっぱいになった兄は、いそいで家に向かいました。
 家の戸口まで来ると、大根を煮込んだよいにおいが、ぷーんとただよってきます。
 兄は草カゴを放り出すと、うまそうに煮えた大根を口に放り込みました。
 そのおいしさといったら、涙が出てくるほどです。
「うまか! 働いたあとの大根汁は、かくべつじゃ!」
 その後、おいしい桜島大根汁を食べるために、兄は村一番の働き者になったという事です。

おしまい

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