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2008年 9月17日の新作昔話
聞きちがい
島根県の民話
むかしむかし、お医者さんの家で働いている男がいました。
いつも言われた事を忘れたり、聞き違えたりするので、みんなからおろか者と言われていました。
ある時、魚屋が魚を売りにきました。
おろか者は、お医者さんのところへ行って、
「魚屋が、魚を売りにきた」
と、言いました。
「よしよし、そんなら一匹もらっておけ」
そこでおろか者は、魚を一匹買いました。
でも、どうやって料理したらいいのかわかりません。
おろか者は、またお医者さんのところへ行きました。
「魚の料理は、どうする?」
すると、お医者さんが言いました。
「煮ても焼いてもいいから、お前の好きなように料理してくれ」
そこでおろか者が包丁で魚を切ろうとしたら、犬が一匹やってきて、ワンワンとほえました。
「しっ、あっちへ行け」
追い出そうとしても、ますますほえるばかりです。
おろか者はすっかり困ってしまい、お医者さんのところへ行きました。
「あの、犬が来てワンワン鳴くけど、どうしたらいい?」
「かまわないから、頭でも一発食らわせてやれ」
お医者さんは、犬の頭を殴れと言ったのに、おろか者は聞きちがいをして、
(そうか、頭を食らわせればいいんだな)
と、思いました。
そこで魚の頭を切って、犬に投げました。
犬は喜んで、魚の頭を食べました。
ところが食べ終わると、犬はまたワンワンほえました。
「このよくばりめ」
おろか者が犬を追い出そうとしても、足もとにまつわりついてほえたてます。
おろか者は、お医者さんのところへ走って行きました。
「頭を食らわせたのに、まだワンワンほえているけど、どうしたらいい?」
「そんなら、まん中のところを、思いきり食らわせてやれ」
(いいのかな? まん中のところなんか食らわせて)
おろか者は不思議そうに首をふりながらもどってくると、魚のまん中を切って犬に投げました。
犬は大喜びで、魚を食べました。
もう残っているのは、しっぽだけです。
それでも犬は、しっぽがほしくてワンワンほえました。
「お前は、なんてよくばりだ」
おろか者は、またまたお医者さんのところへ行きました。
「頭もまん中も食らわせたのに、まだワンワンほえているけど、どうしたらいい?」
お医者さんはとうとう腹を立て、大声で言いました。
「いいかげんにしろ! 頭もまん中も食らわせて逃げないなら、しっぽでもつかんで思いっきり遠くへ投げとばせ」
(なるほど。遠くへ投げとばせばいいんだな)
おろか者はもどってくると、残っている魚のしっぽをつかんで庭へ出て、思いっきり遠くへ投げつけました。
犬はそれを見てかけだし、魚のしっぽをくわえたかと思うと、そのまま逃げていってしまいました。
「やれやれ、これでやっと静かになったぞ」
おろか者は、ほっとしました。
さて、しばらくすると、お医者さんがやってきて、
「どうだ、魚の料理は出来たか?」
と、言いました。
すると、おろか者はにこにこして、
「はあ、だんなさんの言う通り、犬に頭を食らわせ、まん中を食らわせ、しっぽを遠くへ投げたら、やっといなくなった」
と、言いました。
「なに、犬に魚を食らわせただと! わしが食らわせろと言ったのは、殴れという事だ。しっぽをつかんで投げるのは犬の方だ!」
「はあ、それならそうと、言って下さればいいのに」
「・・・・・・」
お医者さんはあきれて、それ以上は何も言えなくなってしまいました。
おしまい
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