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2008年 9月23日の新作昔話

男神山(おがみやま)と女神山(めがみやま)

男神山(おがみやま)と女神山(めがみやま)
新潟県の民話

 むかしむかし、津軽(つがる)の十三湖(とさこ)のほとりに、三助(さんすけ)という男の子がいました。
 父の名を、又兵衛(またべえ)といいます。
 この又兵衛は、どういうわけか妻と別れて、後妻(ごさい)を迎えました。
 そんなある日、嫁いだばかりの継母(ままはは)は、
「あんた、三助をどこか遠い島へ捨ててきておくれ。あの子のわたしを見る目がいやなんだよ。お願いだから、捨ててきておくれ」
と、夫に頼んだのです。
 そして父親の兵衛は、そのひどい頼みを受け入れてしまったのでした。
「わかった、三助を小舟に乗せて海へ流してしまおう。そうすれば舟が途中でひっくり返って、三助はおぼれ死ぬだろう」
 あくる日の晩、三助は小舟に乗せられて、沖へ沖へと流れていきました。
「あんな家にいるよりは、この方がましだ。死ぬかもしれねえが、おら、それでもええだ」
 三助は星空を見上げながら、こう思いました。
 ふと舟の片隅を見ると、鍬(くわ)と鎌(かま)と何かが入っている袋がありました。
 袋の中身はモミです。
「いったい、だれがこんな物を?」
 息子を平気で捨てた父親が、こんな事をするはずありません。
 まして、あの継母であるはずもありません。
「あっ、そうだ、おっかあだ」
 実の母親が元の夫にかくれて、そっと舟に入れておいてくれたのでした。
 三助を乗せた小舟は、ひっくり返る事なく、数日後に松ヶ崎(まつがさき)に打ち上げられました。
 三助はまず、住む為の小屋を作りました。
 食料は海にも山にも、たくさんあります。
 ある日の事、三助が海辺で海草を探していると、一人の娘が近づいてきました。
 三助は走り寄って、声をかけました。
「あんたは、だれかいの? わしは津軽の十三(とさ)から流されてきた、三助というんじゃ」
 すると娘は、答えていいました。
「わたしは能登(のと)から流されてきたもので、早苗(さなえ)と言います」
 それから二人は、同じような運命でこの島に流れついた事を知り、手を取りあって涙を流しました。
 翌日から、二人は力をあわせて働きはじめました。
 三助は母親からのモミを取り出して、稲を作ろうと考えました。
 三助は鍬(くわ)で土地を耕し、早苗は鎌(かま)をつかって草をかりました。
 こうして二人は、一生懸命に働いたのです。
 やがて秋がきて、二人の稲が見事に実りました。
「この米、なんちゅう名前にしようか?」
と、三助が言うと、
「十三三助(とささんすけ)がいいわ」
と、早苗が答えました。
「じゃあ、来年とれる米は、加賀早苗(かがさなえ)という事にしようや」
 やがて年月が過ぎて二人は死んでしまいましたが、三助は男神山(おがみやま)となり、早苗は女神山(めがみやま)となって、いつまでも寄りそっているという事です。
 この島に、はじめて稲をもたらした神さまとして。

おしまい

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