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2008年 9月27日の新作昔話

招き猫になったネコ

招き猫になったネコ
東京都の民話

 むかしむかし、江戸の上野の山の下にある乾物屋(かんぶつや)で飼われているネコが、たった一匹、子ネコを生みました。
 その子ネコというのが、なんと人間が怒った顔そっくりだったのです。
 何日かすると、乾物屋の主人は、
「なんとも気味が悪い。まるで人をうらんでおるような顔じゃ。これでは客も怖がって、店に来なくなる。そんなネコ、早くどこかへ捨ててこい」
と、店の若い者に、お寺の多い寺町に捨てにいかせました。
 店の若い男は子ネコをふところに入れると、大きな池のほとりを歩いて寺町にむかいました。
「ニャー」
 途中でお腹がすいたのか、子ネコが鳴きはじめました。
「これ、鳴くのをやめないか」
 店の若い男は、しかろうとしてふところを開きました。
 すると子ネコはいきなり飛びあがって、喉元に小さな口を押し当ててきたのです。
 子ネコは、おっぱいを探していたのですが、それをかみついてきたと勘違いした店の若い男は、
「わあ、なんだこいつ!」
と、大声をあげて、子ネコをふり落としました。
 男のさけび声をきいて、池のほとりにある茶店のおじいさんが飛び出してきました。
「なんじゃ。いったい何事だ」
 茶店のおじいさんは、若い男から子ネコの話をきくと、
「そんな事で捨てにいくとは、なんとかわいそうな事を。まあ、確かに少しかわった顔をしておるが、よく見れば可愛いじゃないか。よし、わしが飼ってやるから、置いていきなさい」
と、いって、その子ネコを茶店で飼うことにしたのです。
 さて、それからはこの子ネコの顔がかわっているというので、わざわざ遠くから茶店に見にくる人がふえてきました。
 子ネコはお客さんを招いてくれる「招きネコ」となって、池のほとりにあるおじいさんの茶店を繁盛させたという事です。

おしまい

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