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2008年 9月28日の新作昔話

娘の寿命

娘の寿命
岩手県の民話

 むかしむかし、年をとってから、やっと女の子にめぐまれた夫婦がいました。
 娘が年頃になると、両親は家の留守番を頼んで、毎日、畑仕事に精を出していました。
 ある夏の日の事、年を取った汚い身なりの旅のお坊さんがやってきて、家の前で物乞いをしました。
「旅の僧です。空腹で困っております。何か食べ物を」
 娘が食べ物を手わたすと、お坊さんは娘の顔を見ながら言いました。
「美しい娘さんじゃな。いくつになられた?」
「はい。十八です」
 娘が答えると、お坊さんはなぜか悲しそうにうなずいて、立ち去っていきました。
 この様子を、畑からもどってきた父親が見ていたのです。
 気になった父親は、すぐに追いかけて、お坊さんに理由を聞きました。
 するとお坊さんは、
「娘さんはもうすぐ、急な病で亡くなります。それがお気の毒で」
と、いうのでした。
 父親はおどろいて、
「どっ、どうしてわかるのです! それが娘のさだめなら、どうすれば逃れる事が出来るか、お教えください!」
と、とりすがるようにいいました。
 旅のお坊さんは、やがてゆっくりと口をひらきました。
「白酒と杯三つを、目隠しした娘さんに持たせて、朝六時に東の山にむかって歩くようにいいなさい。どこまでもどこまでも歩いて、もう進めなくなったら、目隠しをとりなさい。すると岩の上に三人のお坊さんがすわっているから、なにもいわずにどんどんお酒を飲ませ、お酒がなくなったら、そのとき初めて口をひらいて、命乞いをしなさい。うまくいけば、娘さんは長生き出来るでしょう」
「ありがとうございました。さっそく、その通りにいたします」
 翌日、父親は教えられた通り娘にお酒を持たせて、目隠しをしました。
 そして朝六時きっかりに、家から東の山にむかって歩かせました。
 娘がどんどん歩いていくと、やがて行き止まりになったので、目隠しを取るとそこは岩穴の中でした。
 目の前の一段高い岩の上に、赤い衣を着た三人のお坊さんがすわっています。
 娘はお坊さんたちにどんどんお酒をすすめ、お酒がなくなるとやっと口をひらいて、お坊さんたちにいいました。
「わたしは、お願いがあってまいりました。もうすぐ、わたしは死ぬという事ですが、どうかお助けくださいませ」
 深く頭をさげて命乞いをすると、三人のお坊さんは、赤くなった顔を見あわせました。
「人の運命を変えてはいけないのだが、こんなにごちそうになっては、何とかしなければならんな」
と、一人のお坊さんがいいました。
 二人目のお坊さんは、持っていた帳面を見ながら、
「なるほど。あと三日の寿命じゃな」
と、いいました。
 三人目のお坊さんは、娘に年齢をたずねました。
 娘が、
「はい。十八でございます」
と、答えると、お坊さんたちは、
「よしよし、わかった。ちょっと八の字をくわえてやろう」
と、帳面に八の字を書きくわえて、娘の寿命を八十八にしたのです。
 おかげで娘は幸せな結婚をして子宝にも恵まれ、大した病気も無く八十八歳まで長生きをしたという事です。

おしまい

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