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2008年 9月30日の新作昔話
信濃の浦島太郎
長野県の民話
木曽川(きそがわ)に伝わる、浦島太郎伝説です。
浦島太郎は上松の寝覚めの床に住んでいて、毎日岩に腰掛けては、つり糸をたれていました。
ある日の事、浦島太郎がいつものようにつりをしていたら、上流の沢にいきなり鉄砲水が出て、あっという間もなく浦島太郎は水に飲み込まれてしまいました。
それからどれくらいたったのか、ふと気がついてみると、太郎は今までに見たこともないような、きれいな座敷に寝かされていたのです。
そしてそばではきれいな女の人が、心配そうに太郎をじっとのぞきこんでいるのです。
太郎は飛び起きると、
「ここはどこだ?」
と、たずねました。
するとその女の人は、にっこり笑って、
「ここは竜宮でございます。私は乙姫です」
と、言うのです。
「すると、これが話に聞く竜宮か」
それから何日かたつうちに、太郎はすっかりここの暮らしが気に入りました。
乙姫さまはきれいだし、毎日うまいものは食べられるしで、それこそ夢のような毎日をすごしました。
けれども、いつまでもここに、こうしているわけにはいきません。
そこであるとき、乙姫さまにわけを話したところ、
「そうですか。残念ですが仕方ありませんね。ではどうぞこれをお持ち下さい。でも決して、ふたを開けてはなりませんよ。開けずにいれば年を取る事なく、いつかまた、このままの姿でお会い出来るでしょう」
と、乙姫さまは、なごり惜しそうに玉手箱を太郎に渡しました。
こうして太郎は、久しぶりにもどってきました。
ところがどうしたわけか、あたりの山や川は少しも変わらないのに、誰一人知った人がいないのです。
一人ぼっちの太郎は、それでもまた前のように岩に腰かけて、つり糸をたれながら暮らし始めました。
けれどもしばらくするうちに、太郎は乙姫さまが恋しくてたまらなくなりました。
そして別れぎわにもらった玉手箱の事を思い出すと、開けるなって言われていた事などすっかり忘れて、つい、ふたを開けてしまったのです。
そのとたん、中から白い煙が立ちのぼって、太郎はみるみるうちに白髪頭のおじいさんになってしまいました。
おしまい
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