きょうの日本民話
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2008年 10月8日の新作昔話

ウサギの誕生

ウサギの誕生
北海道の民話

 むかしむかしの大むかし、月には大勢の王子さまが住んでいました。
 王子さまはみんな元気で明るく、遊ぶ事が大好きです。
 いつも月の世界で、走ったり歌ったり追いかけっこをしたりして過ごしていました。
 あるとき、月に雪が降りました。
 キラキラ、ヒラヒラ
 キラキラ、ヒラヒラ
 輝きながら舞い降りてくる真っ白な雪に、王子さまたちは大喜びです。
「わーい。雪だ、雪だ」
「何をして、遊ぼうか?」
 雪を手の平に乗せたり、そっと口に入れてみたりしているうちに、雪は月一面に真っ白に降りつもりました。
「なんて美しいんだろう。まるで、真珠をしきつめたようだ」
 一人の王子さまが、雪を両手で包んで、ボールのように丸く固めました。
 そして雪の玉を、近くにいた王子さまに投げつけたのです。
「わっ、冷たい〜」
 ぶつかった雪の玉はたちまちこわれて、キラキラと散らばりました。
「やったなぁ!」
 ぶつけられた王子さまも、雪の玉を作って投げ返します。
 それを見ていたほかの王子さまたちも、雪の玉の投げっこを始めました。
「それっ」
「わあ、冷たい」
「今度はぼくの番だ。えいっ!」
 そんなふうに楽しく雪合戦をしているうちに、雪の玉が一つ、月を飛び出してしまったのです。
 月から落ちた雪は、どんどんどんどん飛んでいって、とうとう地球まで行ってしまいました。
 その様子を、神さまが見ていました。
 神さまは月に初めて降った美しい雪が、やがてお日さまに溶けて消えてしまうのはもったいないと思い、せめて地球に落ちていった雪だけでも何とかしようと、地球に落ちた雪の玉に、長い耳と目と鼻と口、それに四本の足と、小さくてかわいいしっぽをつけて、生命を吹き込みました。
 神さまに生命をもらった雪の玉は、たちまちぴょんぴょんとはねまわりました。
 神さまは、にっこり笑って言いました。
「そなたの名前はウサギ。ウサギにしよう。ウサギよ、地球という星で幸せにくらすのじゃよ」
 こうして、ウサギが生まれたという事です。

おしまい

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