きょうの日本民話
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2008年 11月4日の新作昔話
忍術使いのどうぼう
新潟県の民話
むかしむかし、京の三角、江戸の三角、越後(えちご→新潟県)の三角といわれる、三人のどろぼうがいました。
京の都や江戸の町や越後の国で、それぞれに一番といわれたどろぼうたちです。
ある日、この三人のどろぼうが一緒になって、大金持ちの家へ忍び込みました。
ところが、さすがは大金持ちの家です。
若くて強そうな男たちが大勢いて、何も盗み出さないうちに三人ともつかまってしまいました。
日ごろはつかまったことのない三人だけに、どうしてよいかわかりません。
「わしらはまだ何も盗んでいません。どうか、かんべんしてください」
三人は、両手を合わせてあやまりました。
すると主人が出てきて、
「いや、かんべんすることはできない。こいつらを役人のところへつれていけ」
と、言いました。
「ま、まってください」
京の三角が言いました。
「役人のところへつれていかれる前に、おもしろい芸を見せましょう」
「おもしろい芸だと」
主人はどろぼうたちが、どんな芸をするのか見たくなりました。
「よし、はなしてやれ。なにを見せるか知らんが、逃げようなんて考えてもむだだぞ」
「逃げるなんてとんでもない。それより、竹ざおを一本かして下さい」
京の三角が竹ざおを庭に立てて、その横に江戸の三角と越後の三角がならびました。
「それでは、わしらの芸をお目にかけましょう」
京の三角が、なにやら呪文をとなえたと思ったら、たちまちとんびになって飛び上がり、竹ざおのてっぺんに止まりました。
「これは、なんと!」
主人も若い男たちも、びっくりして口を開けたままです。
すると今度は、江戸の三角が呪文をとなえました。
そのとたん、江戸の三角はネズミになって、ちょこちょこと走りまわりました。
「なんと、不思議な!」
主人も若い男たちも、まるで夢を見ているような気持ちです。
つづいて越後の三角が呪文をとなえると、小さな豆粒になりました。
「おおっ、こんどは豆粒だ!」
みんなが驚いている前で、ネズミは豆粒をくわえると、するするっと竹ざおをのぼっていきました。
みんなはいっせいに、竹ざおを見あげました。
するととんびがネズミのしっぽをくわえて、さっと空へとびたちました。
「それではみなさん、さようなら」
ネズミの口の中の豆粒が言いました。
とんびはぐんぐん空へのぼっていき、とうとう見えなくなってしまいました。
おしまい
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