きょうの日本民話
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2008年 11月5日の新作昔話

てんぐの鼻が、高くなったわけ

てんぐの鼻が高いわけ
宮崎県の民話

 むかしむかし、あるところに、とても物知り男がいました。
 どんなことでもこの男にたずねると、すぐに答えてくれるというのです。
 そこで村一番の長者が、この男を困らせてやろうと思い、
「お前は何でも知っているそうだが、てんぐの鼻がどうして高くなったのか、教えてくれ」
と、言いました。
 すると男は、こわい顔で、
「うーん。こればかりは、だれにも教えられん」
と、言いました。
「まあまあ、そこをなんとか、お願いします」
 長者がわざとていねいにたのむと、男は声を小さくして言いました。
「それでは教えてやるが、だれにも言うなよ。まず庭へ出て、あの高い杉の木にのぼれ」
 長者は男に言われたように、杉の木にのぼりました。
「さあ、教えてくれ」
 長者は、一番低い枝につかまって言いましたが、
「だめだ。もっと上にのぼれ!」
と、男が下からどなりました。
 長者はまた少しのぼって、止まりました。
「このへんなら、いいだろ?」
「いや、もっと上まで!」
 長者は、また上にのぼりはじめました。
 ところがいくらのぼっても、男は、
「もっと上までのぼれ!」
と、言うので、とうとう木のてっぺんまでのぼってしまいました。
 長者はてっぺんの枝につかまって、言いました。
「もう、これ以上はのぼれん。さあ、早く教えてくれ。てんぐの鼻は、なぜ高い」
 すると男は、下から言いました。
「気分はどうだ? まるで、てんぐになったような気がするだろう」
「うん、そんな気もする」
「よし、そんなら自分の鼻をさわってみろ。少しのびていないか?」
 長者は片手をはなして、自分の鼻をさわってみました。
 ところが別に、変わったところはありません。
 そこで、むっとして言いました。
「ばかを言うな。この鼻は生まれつきで、のびるわけがなかろう」
 すると男が、長者に言いました。
「その通り。鼻はみんな生まれつき。てんぐの鼻が高いのは生まれつきじゃ。急に伸びたり縮んだりするわけがない」
「そんなことは、あたりまえだ。ばかにするな」
 長者が腹を立てて降りようとしたのですが、高くのぼりすぎたので、足がふるえて動けなくなってしまったそうです。

おしまい

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