きょうの日本民話
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2008年 11月16日の新作昔話

うどどん

うどどん
鹿児島県の民話

 むかしむかし、薩摩の国(さつまのくに→鹿児島県)に、うどどんという大きな大きな大男がいました。
 その大きさは、片方の足は加治木(かじき)の岩岳(いわだけ)のふもとに、もう片方の足は国分(こくぶ)の田んぼの真ん中において、桜島を枕に寝ていたというほどです。
 ある夏のこと、その日は特に暑い日だったので、うどどんは、のどが乾いてたまりません。
「ああ、どこかに冷たい水でもなかろうか」
と、見回しましたが、小さな川ばかりで、とてもうどどんがたっぷり飲めるほどの水はありません。
「いっそ、川内川(せんだいがわ)にでも行こうか。ちっと遠いが」
 うどどんはぶつぶつ言いながら、山をふみこえて、川内川まで出かけて行きました。
 さて、川内川について、一番深い倉野のふちに行ってみると、水はごうごうと流れています。
「よしよし、これならたっぷり飲める」
 さっそくとばかり、うどどんは水を飲もうとしました。
 しかし体があまりにも大きいので、かがむだけでも大仕事です。
 そこでうどどんは、右の足を須杭(すくい)のくのせの岸に、それから左の足を荒瀬(あらせ)のてっぺんにかけて、
「よいしょ」
と、ふんばって、そしておしりを、
「どっこいしょ」
と、牧(まき)の峰におろしたところ、その辺りの山々が、ぐらぐらっと揺れ出したのです。
 しかしやっと腰がすわったので、大きな口を水につけると、
「ごくっ、ごくっ」
と、飲み続けました。
 すると川の水はどんどん減って、ついになくなってしまったのです。
 でも、そのまま飲み続けたので、口の中に川の砂が入ってしまいました。
「ぺっ、ぺっ。口がジャリジャリする」
と、口の中の砂をはき出し、その砂がたまって出来たのが、今の市比野(いちひの)の丸山(まるやま)ということです。
 それから牧の峰のてっぺんが平たくなっているのは、うどどんが水を飲んだときに、おしりでこすったからと言われています。

おしまい

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