きょうの日本民話
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2008年 11月26日の新作昔話

山の三太郎

山の三太郎
長崎県の民話

 むかしむかし、雲仙岳(うんぜんだけ)は、帯山(おびやま)と呼ばれる大きな火山でした。
 何度も大きな爆発をくり返して、そのたびにまっ赤に焼けた溶岩を吹き出すのです。
 おかげで山のふもとのあたりは、草も木もない荒れた土地が一面に広がっていたそうです。
 さて、その帯山の上の方に火戸が淵(ひどがふち)という湖のあって、そこには、おしゃべりなカッパが三匹すんでいました。
 一番大きいのが「妙見太郎(みょうけんたろう)」
 二番目に大きいのが「風見太郎(かざみたろう)」
 一番小さいのが「国見太郎(くにみたろう)」
 そして三匹合わせて、「山の三太郎」と呼ばれていました。
 ところがこの帯山には、三太郎たちの他に、高来津久良(たかきつくら)という山の神さまもいました。
 神さまは、カッパたちがあまりなまけものなので、ある日とうとう腹を立てて、
「いつまでも遊んどってはいかんぞ! まじめになって、早く人間にならにゃいかん」
と、言って、妙見太郎には天見役(てんみやく)、風見太郎には風見役、国見太郎には国見役を申しつけました。
 そして、
「お前たちは、おしゃべりがすぎる。これからは、いっさいしゃべってはならん」
と、命令したのです。
 次の日から三匹のカッパは神さまに言われた通り、しゃべるのをやめてまじめに働きました。
 妙見太郎は毎日空を見上げ、夜になると星や月を見つめては、雨や雪の番をしました。
 風見太郎は一日中風の音を聞き、雲の見張りをします。
 国見太郎は地面をほったり埋めたりしては、地震の番をして暮らしました。
 最初はよかったのですが、そのうち慣れてくると三匹ともだんだんつまらなくなってきて、神さまにかくれて遊びまわるようになったのです。
 ところがこれに、神さまが気づかないはずがありません。
「あれほど言って聞かせたのに、まだわからんのか!」
 神さまは怒って、地面を蹴りつけました。
 するといきなり、ドドドーッという地響きが聞こえたかと思うと、山がぐらぐらと動き出して、帯山のてっぺんから火が噴き出したのです。
 みるみる山はまっ赤に焼けて、火柱が天高く上がりました。
 こうして帯山は、何度も何度も噴火をくり返したのです。
 それからしばらくしたころ、噴火がおわって静かになった帯山のあとに、今までなかった三つの山が出来ていました。
 これは、神さまの怒りを受けたカッパの三太郎たちが、山になったものです。
 それ以来この三つの山は、「普賢岳(ふげんだけ)」「妙見岳(みょうけんだけ)」「国見岳(くにみだけ)」と呼ばれるようになり、今も三つ仲良く並んでたっているのです。

おしまい

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