きょうの日本民話
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2008年 11月28日の新作昔話
生き返ったカジカ
富山県の民話
むかしむかし、富山のある村で、村人が川原に集まって春祭りをしていました。
この日は朝から、村中の人たちが野菜やお味噌などを持ちよって、男たちが川でとったカジカと一緒に煮て、おいしい『カジカ汁』をつくって食べるのです。
ある年の春祭りの日のこと、カジカもたくさんとれて、川原のあちこちで料理が始まりました。
料理は簡単なもので、包丁の先でカジカのお腹をすこし裂き、そこから腹わたをとりだして野菜と一緒に味噌汁にするのです。
みんながたのしそうに料理をしていると、一人の旅人が通りかかりました。
「お前たち、何をしておるんだ? 今日が何の日か知らんのか?」
「何の日って、今日は村の春祭りの日じゃ。春祭りには、毎年こうして村中でカジカ汁を食うことになっとるんじゃ。体が温まって、おいしいぞ。もうすぐ出来るで、あんたも一杯、食っていったらどうじゃ」
何匹ものカジカのお腹を包丁の先で裂いていた村の男がいうと、旅人が声高にいいました。
「ばか者! 今日は二十八日。親鶯上人(しんらんしょうにん)という、偉いお坊さんの月のご命日ぞ。その日に生きものを殺すとは何事か!」
村の男はびっくりして、包丁から手をはなしました。
すると、お腹を裂かれてまな板の上にのっていたカジカがみんな生き返って、ピチピチとはねだしたのです。
「大変だ。はやくカジカを川へ戻すんだ!」
村の男たちは、急いでカジカを川へ逃がしにいきました。
このことがあってから、この村の川にすむカジカは、みんなお腹に切られたような、くぼみがあるようになったという事です。
おしまい
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