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2008年 12月1日の新作昔話

たわけものと藪医者(やぶいしゃ)

たわけものと藪医者(やぶいしゃ)
山口県の民話

 むかしむかし、あるところに、とても仲の悪い和尚と医者がいました。
 ある日の事、和尚が法事に出かけると、田んぼのへりで二人の百姓がけんかをしていました。
「これこれ、どうした? なにを争っておる」
 和尚がわけを聞いてみると、二人は田んぼのさかい目の事で争っていたのでした。
「そうか。それならば・・・」
と、和尚はうまく田のさかい目をわけてやって、二人を仲直りさせたのでした。
 ちょうどそこへ医者が通りかかり、この話を聞くと大笑いしながら、
「あはははは。和尚は『たわけ者』だからな。だから、田を分けるのは上手じゃろうて」
と、悪口を言うと、向こうへ行ってしまいました。
「なに! わしがたわけ者だと!」
 腹のたった和尚は、なんとか医者に仕返しをしてやろうと考え、小僧に言いつけました。
「急病だから、早く医者を呼んできてくれ」
 しばらくすると、小僧に話を聞いた医者が飛んできました。
「どうした! 誰が悪いんじゃ!」
 すると和尚は、すませた顔で、
「ああ、実はな、裏の竹藪が病気なんじゃ」
と、答えました。
 すると医者は、
「竹藪? わしは人をなおす医者じゃ! 竹藪の病気などなおせんわい!」
と、文句を言いました。
 すると和尚は、この時とばかりに、
「人がお前さんの事を『藪医者』というとったから、きっと竹藪の病気もなおせるんじゃと思っとったわい。あはははは」
と、見事にさっきの仕返しをしたのです。

おしまい

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