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2008年 12月25日の新作昔話

百七十歳の九尾キツネ

百七十歳の九尾キツネ
埼玉県の民話

 むかしむかし、埼玉のあるお寺の小僧さんにキツネがとりついて、とつぜんおかしなことを口走りはじめました。
「われは、この寺の境内にずっとすんでおるキツネじゃ。この間旅に出て、あちこち歩いたが、ある村で庭先にいたニワトリをとって食ったところ、村人たちに追われて、やっとのことでまたここへもどってきた。今年で百七十歳になるが、もう、からだがいうことをきかぬ。われを神としてまつって、毎日供え物をしてくれぬか」
 その話をきいて、和尚さんは怒りだしました。
「百何十年も前から、この寺の境内にすみついて年老いたというが、いままでお前の事など聞いた事がない。年老いて食べるのに困ったから、毎日食べ物を供えてくれとは、なんたるものぐさじゃ。小僧の体からはなれて、さっさとどこかへ立ち去れ! さもなくば、お前をたたき出してやるぞ!」
 和尚さんは太くて長い鉄の棒を持ち出してきて、すごいけんまくです。
 ところがキツネの方は、落ちつきはらって言いました。
「われは、ものぐさではない。百年以上も前に、われを見たという話を聞いた者が、必ずいるはずじゃ。証拠を見せてやるから、年をとった村人たちを集めてみよ」
 そこで和尚さんは庄屋をはじめ、村のお年寄りたちをお寺の境内に招きました。
 そしてキツネのいう証拠を、見せてもらうことにしたのです。
「われを神としてあがめ、供え物をしてくれれば、これからのち村人たちの願いをかなえてやろう。火災、干ばつ、病気の心配などいらぬように、どんな願いごともかなえてやろう。それでは、証拠を見せてやろう」
 いばった口調でいうと、キツネは小僧さんの体をはなれて、九本のしっぽのある正体を現しました。
「おおっ、九尾ギツネじゃ。子どもの頃、じいさんから聞いた事がある」
 村のお年寄りの中から、おどろきの声があがりました。
 むかしから、村にはたしかにこの九本のしっぽを持つ九尾ギツネがすんでいたのです。
 和尚さんをはじめ庄屋さんたちは、さっそく相談をしました。
 そしてお寺の門前にある小山の南側に小さな祠をつくって、神としてあがめる事にしたそうです。

おしまい

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