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2009年 5月20日の新作昔話

ヤンニとドラゴンとお嫁さん

ヤンニとドラゴンとお嫁さん
ギリシアの昔話

 むかしむかし、ギリシアのある所に、ヤンニという男の人がいました。
 ある日の事、ヤンニの前に、一頭のドラゴンが現れました。
「おいヤンニ、昼ごはんにお前を食べてやるから、覚悟しろ」
 びっくりしたヤンニは、ドラゴンにお願いしました。
「まっ、待ってくれ。お願いだから、待ってくれ。ぼくのお嫁さんになる人のところへ、最後のお別れに行ってくるから」
 するとドラゴンは、ニヤリと笑って言いました。
「いいだろう。ただし、必ずここへ戻って来い。でないと、お前の嫁になる女も食べてやるからな」
 ヤンニは約束すると、急いでお嫁さんになる人のところへ行きました。
「すまないが、もうお別れだ。ぼくは、ドラゴンの昼ごはんになってしまうんだ」
 それを聞くと、お嫁さんになる人が言いました。
「では、わたしも一緒に連れて行ってください」
「とんでもない。そんなことをしたら、お前も昼ごはんにされてしまう。お前はここにいなさい」
「いいえ、わたしも行きます」
「・・・でも」
「わたしも行きます」
 そこでヤンニは仕方なく、お嫁さんになる人を一緒に連れて行きました。
 さて、ドラゴンはヤンニが女の人を連れて来たのを見て、大喜びです。
「ああ、おれの昼ごはんが二倍になって戻ってきたぞ」
 ヤンニとお嫁さんになる人がそばへ行くと、ドラゴンはよだれをこぼして言いました。
「よく戻って来た。さあ、さみしくないように、二人一緒に食べてやるからな」
 すると、お嫁さんになる人が、ドラゴンの前に両手を広げて言いました。
「まあ、なんて、おいしそうなドラゴンだこと。わたしは、朝ごはんにドラゴンを九頭も食べてきたのに、もうお腹がペコペコだわ。でもこれで、十頭目のドラゴンを食べられるわ。うふふふ」
 それを聞いて、ドラゴンはびっくりです。
 さっきの元気もどこへやら、ドラゴンはガタガタ震えながら言いました。
「ヤンニさん、おねがいだから教えてくれ。この女の人は、だれの娘さんなのか」
「あの、それは・・・」
 ヤンニが、もじもじしていると、お嫁さんになる人が自慢げに言いました。
「わたしは、神々の王、ゼウスの娘よ。父にもらったカミナリの力で、ドラゴンを丸焼きにしてから食べるのよ。さあ、覚悟しなさい!」
 ドラゴンはびっくりして飛び上がると、
「うぎゃーー! 助けてくれー!」
と、あとも振り向かずに逃げていきました。
 それを見たお嫁さんになる人は、ヤンニにニッコリ微笑むと、
「あはははは。あのドラゴンたら、わたしのうそに、まんまとだまされたわ。さあヤンニ、家に帰りましょう」
と、ヤンニの手を引いて、家に戻っていきました。

おしまい

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