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2009年 11月6日の新作昔話

舞茸

舞茸
京都府の民話

 むかしむかし、京の都の木こりたちが、大勢で北山(きたやま)に出かけました。
 木こりたちはいつの間にか道に迷ってしまい、お腹を空かせて途方にくれていました。
 すると突然、林の奥の方から、がやがやと騒々しい人の声が聞こえてきたのです。
「助かった。あそこに人がいるぞ」
 木こりたちが駆け付けると、そこに現れたのは五人の尼さんたちでした。
 ですが奇妙な事に、その尼さんたちは目を大きく見開き、手ぶり足ぶり、おもしろおかしく踊っているのです。
 木こりたちは、何だか恐しくなってきました。
「何でこんな所で踊りを?」
「もしやあれは、鬼か魔物ではなかろうか?」
 木こりたちは、あわてて木の上や草の陰に隠れました。
 でも尼さんたちは木こりたちの居場所を知っているように、踊りながらどんどん近づいてきます。
 そこで一人の木こりが、勇気を出して尋ねました。
「もし、そこの尼さま。こんな山中を、どうしてその様に踊りまわっておられるのですか?」
 大声で笑いながら踊り狂っている尼さんたちの一人が、やはり舞い踊りながら答えました。
「不思議に思われるのは当然です。
 私たちにも、どうしてよいのかわからないのですから。
 実は私たちは、この山寺に住む尼で、仏さまにお備えする花をつんでこようと出かけてきたのです。
 でもどうした事か道に迷ってしまい、気がついたら日もとっぷりと暮れかけていました。
 お腹は空くし、帰る道はわからないしで、ほとほと困り果てた末に、どうせこのまま死ぬのなら、せめてお腹だけでも満たそうと、そばに生えていた茸(キノコ)をひと口づつ食べたのです。
 でもそのおいしい事といったら、この世の物とも思えないほどでした。
 それでまわりにあった茸という茸を、みんな食べ尽くしてしまいました。
 仏さまに仕える身でありながら、あさましく食べた天罰なのでしょうか。
 その不思議な茸を食べ終わったとたん、私たちの手足は、ほれこの通り、勝手に踊り出して、止める事が出来なくなったのです」
 尼さんたちは相変わらず、とても楽しそうに踊っています。
 木こりたちはびっくりしましたが、死ぬ事がないのならと、思い切って残りの茸を分けてくれるように尼さんたちに頼みました。
「ですが、それは・・・」
 尼さんたちは茸を食べる事を止めましたが、木こりたちがどうしても食べたいと言うので、仕方なく茸の場所を教えてあげました。

 やがてその場所へやってきた木こりたちは、その茸をガツガツと食べ始めました。
 たしかにその茸は、この世の物とは思えないほどおいしい茸です。
 やがて木こりたちは、お酒に酔ったようにうっとりといい気持になってきました。
 そのとたん、木こりたちの手足が勝手に動き出して、気がつくと木こりは尼さんたちの仲間入りをしていたのです。
 尼さんたちと木こりたちの奇妙な一団は、踊りながら山中を歩き回りました。
 そして日が西に傾いた頃、ようやく手足は踊りをやめて、みんなはもとの状態に戻りました。
 やっと、茸の魔力が消えたのです。

 この事があってから、京ではこのおいしい茸を、舞茸(マイタケ)と呼ぶようになったそうです。

おしまい

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