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2010年 9月3日の新作昔話

親孝行な娘

親孝行な娘
新潟県の民話

 むかしむかし、あるところに、とても貧乏な母親と息子が暮らしていました。
 娘はまだ子どもでしたが、身体の弱い母親になりかわって一生懸命に働き、毎日、母親の薬と食べ物を買って、その日その日を暮らしていたのです。
 そんな健気な親孝行ぶりが評判になって、お城にいる殿さまの耳にも届きました。

「病気の母親の為に働くとは、今どき珍らしい話だ。若い娘らしいが、何かほうびを取らせてやりたいのう。これ、誰か行って、その評判が本当かどうか確かめて来い」
 殿さまに命令された家来が、早速その村へ行って、色々と聞きまわりました。
 するとその評判は大したもので、誰も彼もが、口々にその娘を誉めるのです。
 それを聞いた家来も、自分の事の様に嬉しくなって、
「素晴らしい。早くその娘を見たいものだ」
と、急いでその親子の住んでいる家に行きました。
 そして障子の穴から中の様子を見てみると、ちょうど晩ご飯を食べているところでした。
(うわさ通りの娘なら、きっと自分は粗末な物で我慢して、母親に栄養のある物を食べさせているのだろう)
 家来はそう思って見ていたのですが、よくよく見てみると母親は黒っぽい妙なご飯を食べているし、娘は白いご飯を食べているのです。
(はて? 聞いていたのとは大違いだな。まあ、たまにはそんな事もあるのかもしれない)
 家来はそう考えて、なおも観察していると、娘はご飯を食べ終わった後、食事の後かたづけもしないで、母親がまだ湯を飲んでいるのに、さっさとふとんに入って寝てしまったのです。
(なっ、なんだこの娘は! 親孝行どころか、まったくもって親不孝な娘だ! けしからん!)
 家来はカンカンに怒って、お城へ帰ると見てきたことを殿さまに伝えました。
「評判など、でたらめです。近所でも評判が良いので、期待していたのですが、まったく、家の内と外では大違い。何と病人の母親には黒い妙なご飯を食わせておいて、自分は白いご飯を食べているのです。おまけに母親がまだ食べ終わらないうちに、あの娘はゴロリとふとんに潜り込んで、そのまま起きて来なかったです」
 それを聞いた殿さまも、カンカンに怒りました。
「それがまことなら、評判とはあべこべではないか! そんな娘は、ほうびどころか、きつく罰を与えねばならぬ! その娘を明日にでも召し出せ!」

 さて次の日、娘はお城に召し出されました。
 その娘を、殿さまが直々に取り調べます。
「お前は母親に、黒い、まずそうな物を食わせて、自分は白い飯を食っていると言うが、それはどういうわけだ?!」
 すると娘は、びっくりした様子で答えました。
「わたしの家は貧乏で、白いお米のご飯は食べられません。病気のお母さんには少しでも力がつくようにと、粟の入ったご飯を食べてもらっています。そしてわたしは、豆腐のオカラを分けてもらって、それを食べているのです」
「へっ? そうなのか? ・・・しかしそれでは、母親がまだご膳が終えないうちに、お前は夜具の中へ入って寝るというが、それはどういうわけだ?!」
「はい、それは、そのまま寝ては、お母さんが寝るときにふとんが冷たいから、わたしが先にふとんに入ってふとんを温めていたのです」
「なるほど。黒いのは粟飯で、お前の食ったのは白米ではなくオカラであったか。う―ん、毎日そうしているのか?」
「はい、とてもお米なんて買えませんから」
「そして夜具も、お前が温めていたのだな」
「はい」
 それを聞いた殿さまは、思わず涙をこぼしました。
「なんとも、けなげな事よ。すまぬ、わしは、勘違いをしてしまった」
 そして家来に命じて、たくさんの褒美をもってこさせました。
「お前に、この褒美をやろう。これからも、親孝行を続けるのだぞ」
 こうして親孝行な娘と母親は、殿さまにもらった褒美で、一生幸せにくらしたということです。

おしまい

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