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2010年 9月8日の新作昔話

あこや姫

あこや姫
山形県の民話

 むかしむかし、千歳山の麓に、あこや姫という、とても琴の上手なお姫さまが住んでいました。
 ある夜の事、あこや姫が琴を弾いていると、
♪ピーヒャララ
と、どこかからか素晴らしい笛の音が聞こえてきました。
 あこや姫がその笛の音色に聞き惚れて、思わず琴の手を止めると、その笛の主である若者が姿を現して、こう言いました。
「私は、名取の左衛門太郎という者です。あなたの琴の音に惹かれて、ここまでやって来ました。さあ、あなたの琴をお聞かせ下さい」
「はい。それでは、ご一緒に」
 それからというもの、あこや姫が琴を弾き始めると、若者は笛を吹きながら現れるようになったのです。
 そんなある日の事、今日も笛を吹きながらやって来た若者が、沈んだ表情であこや姫に言いました。
「実は私は、千歳山の老松なのです。明日、私は、流された名取川の橋材として切り倒される事になったのです。ですから、もうここには来られなくなりました」
 若者はそう言って悲しくほほえむと、すーっと、煙のように姿を消してしまいました。
 次の日、あこや姫が名取川に言ってみると、左衛門太郎が言っていた通り、村では名取川の大橋が洪水で流されていて、その代わりに老松が切られる事になっていたのです。
「そんな・・・」
 びっくりしたあこや姫が、その老松の所へ行ってみると、すでに老松は切り倒された後でした。
 けれど不思議な事に、村人たちがその老松を運ぼうとしても、老松は見えない根でも生えているかのように、びくとも動かないのです。
 けれど、あこや姫が老松のそばに来て、切られた老松に手をかけると、今までびくともしなかったのが嘘のように、老松は動き出したのです。
 それから数日後、あこや姫は老松が切られた場所に若松を植えて、万松寺を建てて菩提を弔ったのです。
 やがてこの松は、『あこやの松』と呼ばれるようになり、あこや姫と老松が最後に別れた峠を、『笹谷峠』と呼ぶようになったそうです。

おしまい

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