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2011年 2月21日の新作昔話

ウサギの目が赤いわけ

ウサギの目が赤いわけ
大阪府の民話

 むかしむかし、ウサギには、とても立派な角がありました。
 ウサギはこの角が自慢で、外へ出かける時はいつも角を頭の上にのせていました。
「えへん。どうだい、この角は。きみたちには、こんな立派な角はないだろう」
 ウサギはほかの動物に会うと、いつも大いばりです。

 ある日の事、いつものようにウサギが頭に角をのせて歩いていると、反対側からシカがやってきました。
 その頃のシカには、まだ角がなかったのです。
 ウサギはさっそく、シカに言いました。
「シカくん、きみはぼくよりも体が大きいが、こんな立派な角はないだろう」
「・・・・・・」
 いくら自慢されても、角のないシカには言い返す事が出来ません。
(いいなあ、ぼくにも、あんな立派な角があったらなあ)
 シカはウサギが、うらやましくなりました。
 そこでシカは、ウサギに言いました。
「ほんとうに、立派な角だね。すごいよ。・・・ねえ、ちょっとだけ、ちょっとだけでいいから貸しておくれよ」
 そう言われると、ウサギはうれしくなりました。
「うーん。大事な角だが、そこまで言うのなら、ちょっとぐらいなら貸してやってもいいかな。はい」
 ウサギが頭の角を外してシカに貸してやると、シカはウサギの角をしげしげとながめました。
(いいなあ、いいなあ、ほしいなあ)
 見れば見るほど立派な角なので、シカは角がほしくてほしくてがまんできません。
 そこで、ウサギに言いました。
「ああ、なんて素敵な角だろう。ねえ、お願いだから、ぼくにもちょっとかぶらせてくれないか。ほんのちょっと、ちょっとだけでいいんだ」
 シカがあんまりうらやましそうに言うので、ウサギはますますうれしくなりました。
「うーん。大事な角だが、ちょっとだけなら、かぶらせてやってもいいかな」
 ウサギは角を、シカの頭にかぶらせてやりました。
「どうだい、気分は?」
「いいよ。まるで、王さまになった気分だ」
 シカはうれしそうに首をふって、川のふちへ行きました。
 そして川にうつる自分の姿を見て、シカはうっとりです。
「ウサギさん、どうだい。ぼくにも角が、似合うと思わないかい?」
「まあまあだね。だけど、ぼくほどは似合わないよ」
「いいや、この角はぼくにぴったりなんだ!」
 シカはそう言うと、いきなり川へ飛び込みました。
「あっ、こら!」
 びっくりしたウサギはシカに文句を言いましたが、シカは向こう岸へ上がると、あかんべーをしながら言いました。
「やーい、返して欲しければ、ここまでおいで」
「なっ、なんだとー!」
 でもウサギは泳げないので、向こう岸へ渡る事が出来ません。
「こら、返せ! 返さないと、ひどいぞ!」
 ウサギは大声で言いましたが、シカはそのまま山の中へ逃げてしまいました。
「あーん、ぼくの角、ぼくの角が・・・」
 それからというもの、ウサギは泣きながら毎日シカを探してまわりました。
 でもどうしても、あのシカを見つける事は出来ませんでした。
 ウサギはあんまり泣きすぎたので、目がまっ赤になってしまったという事です。

おしまい

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